場内どよめく“山本劇場” 得意の背負いでインターハイチャンピオン
(8日・福岡市民体育館)
電光石火の「山本劇場」
豊富な練習 得意技磨く
場内もどよめく圧倒的な一本勝ちだった。山本悠司は昨年の準優勝に触れ、「インターハイの借りはインターハイでしか返せない。ひたすらうれしい」と喜んだ。
1回戦と準々決勝は、相手の指導3つで技ありの優勢勝ち。2、3回戦は鮮やかな一本勝ち、準決勝は返し技で技ありを奪い、勝ち進んだ。準決勝まですべての相手に指導が与えられるほど警戒されていた。
迎えた決勝。直前に野田慎太郎監督から「会場を山本劇場にしてこい」との励ましを受けて畳の上に立った。なかなか自分の組手になれない中、左手が右襟をつかんだ瞬間だった。電光石火で右手も、左手近くの襟をつかんで背負い投げ。
「今までで一番練習してきた得意技で優勝できた」と笑顔を見せた。友人の寺井沙希(帯農3年)が陸上競技の女子円盤投げで優勝したことも刺激になった。
池田小1年のとき、父の公洋さん(47)に連れられて池田少年団の門をたたいた。9年間指導し、今大会に駆け付けた石田隆治団長は「センスを感じさせたわけではない。コツコツと練習する努力家だった」と振り返る。
池田中3年の夏の全国中学で3位に入り、道内外の強豪校からも誘いを受けたが、選んだのは地元十勝の帯農だった。池田中には柔道部がなく、少年団の活動日も毎日ではなかった。その合間を埋めたのが帯農への出稽古だった。野田監督は「世話になったと感じたのかな。義理堅い男です」と笑う。
1年の全道高体連の北北海道ブロック団体戦決勝で右足首を痛め、個人戦をキャンセル。インターハイや全国高校選手権道予選で敗れた。「自分なりに頑張っていたが、どこか中学のままの意識があったのかもしれない」と言う。
豊富な練習量を誇る。昨年、2年生でインターハイ準優勝して以来、公式戦で高校生には負けなし。午前6時から自主的にランニングやウエートトレーニングで汗を流し、部活動でも積極的に乱取りを行って鍛え上げた。
学校では森林科学科に所属。木や土壌、森林経営などを学び、4人一組の平板測量では校内の1位に輝いた。父が社会人サッカーをしていた影響で小さい頃から大のサッカー好き。今も寮でテレビ観戦し熱く声援を送る一面もある。
9月に全日本ジュニア体重別選手権、10月には国体も控える。当面は全日本ジュニア優勝を目標に置く。その先にある世界ジュニアにも視線を送る。背負い投げの名手で、五輪金メダリストの古賀稔彦さんらが憧れ。子供の頃に描いたサッカー選手の夢は、今は柔道での五輪出場に変わった。
<個人戦>(関係分)
【男子】
◇73キロ級
▽1回戦
山本 悠司(帯農) 優勢 川下 寛斗(長崎南山)
▽2回戦
山本 袖釣り込み腰 佐藤 龍汰(宮城・柴田)
▽3回戦
山本 大内刈り 中川 将嗣(山梨・東海大甲府)
▽準々決勝
山本 優勢 野尻 幸汰(岡山・作陽)
▽準決勝
山本 優勢 石田 宏樹(福岡・東海大五)
▽決勝
山本 背負い投げ 吉田 優平(岐阜・大垣日大)