令和6年に特に注意を要する病害虫
道総研 中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ・病害虫グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
道総研 上川農業試験場 研究部 生産技術グループ
道総研 道南農業試験場 研究部 作物病虫グループ
道総研 北見農業試験場 研究部 生産技術グループ
道総研 花・野菜技術センター 研究部 生産技術グループ
1.成果の概要
北海道病害虫防除所、道総研各農業試験場および道農政部技術普及課等で実施した病害虫発生予察事業ならびに試験研究で得られた結果から、令和6年に注意すべき病害虫について報告する。
2.令和5年の病害虫の発生状況
農作物の栽培期間を通じて気温が高く経過したため、水稲の紋枯病および秋まき小麦の赤さび病、ばれいしょの軟腐病、そうか病、てんさいの褐斑病など高温性の病害が多発した。特にテンサイの褐斑病は全道各地で被害が生じた。また、セイヨウチャヒキ(野生種エンバク)のいもち病が道内各地で散発し、特に十勝地方で多発した。害虫では、全般的に高温による早発や旺盛な増殖、加害活動が被害を拡大させ、なかでもだいこんのキスジトビハムシが多発した。さらに、前年の発生の多かった春まき小麦のムギキモグリバエも発生が多かった。
このほか、オオタバコガおよびシロオビノメイガの飛来が野菜類やてんさいに被害をもたらした。
主要病害虫のうち、令和5年に多発およびやや多発した病害虫を表1に示した。
3.令和6年に特に注意を要する病害虫
1)トマトのトマトキバガ
令和5年は、侵入警戒有害動植物であるトマトキバガの飛来が全道各地で確認された。8月下旬には施設栽培トマトで葉や果実に食害痕が発生し、被害が確認された。本種の発生が疑われた場合は、速やかに最寄りの農業改良普及センター等に連絡する。発生を拡大させないため、薬剤散布を行うとともに、被害葉や被害果実はほ場に放置せず、速やかに土中に深く埋没するなど適切に処分する。越冬ハウスでは残さやナス科雑草等の寄主植物を除去する。薬剤散布にあたっては、最新の農薬登録情報を確認し、薬剤抵抗性の発達を防ぐため系統が異なる薬剤のローテーション散布を行う。
2)小豆のマメノメイガ
令和5年は、全道各地の小豆ほ場でノメイガ類による莢や花の食害が多発し、マメノメイガ幼虫が主体であることが確認された。本種は花・芯葉・莢に産卵し、幼虫もこれらの部位を食害する。令和5年は小豆の播時期が遅いほ場で被害が大きい事例が確認された。飛来性と考えられており、例年アズキノメイガの発生が少ない地域でも突発的に発生し世代を繰り返すため、被害拡大に注意が必要である。本年の発生状況から、当面の対策としては、播種は適期に実施し、ノメイガ類に登録のある農薬を用いて茎葉散布する。通常のアズキノメイガの防除時期に加えて開花始め及び9月以降の防除も有効と推測される。
3)てんさいの褐斑病
令和5年は、6月中旬以降の高温により初発時期が早まった。夏季を通して気温が高く、発生量が増加し、道内全域で被害が認められた。本年の多発により一次伝染源が多く存在するため、令和6年も早発・多発に注意する必要がある。耕種的な対策としては、連作を避け、可能な限り抵抗性の強い品種の導入が有効である。薬剤散布は遅くとも初発直後までに開始し、散布間隔が開きすぎないよう注意する。多数の薬剤で耐性菌の発生が確認されているため、マンゼブ剤を基幹とした防除を実施する。
4.令和5年に新たに発生を認めた病害虫
令和5年に道内で新たに発生を認めたのは17病害虫(病害10、害虫7)であった。その一部を抜粋して紹介する。
1)かぼちゃのホモプシス根腐病
晴天の日に茎葉の萎れや生育の衰退が認められる。根部を引き抜くと、側根や毛細根に特徴的な黒い墨様の病原菌の構造物(偽子座)が観察される。病原菌はうり科作物に寄生し、被害をもたらす。これまで道内ではきゅうりおよびメロンで発生が確認されていた。
2)かんしょのタバココナジラミ・バイオタイプQ
施設内で栽培されているかんしょ苗で発見された。タバココナジラミの種内には見た目で区別はつかないが生物学的に異なる系統があり、バイオタイプQはその一つである。本系統は、道外ではネオニコチノイド系および合成ピレスロイド系など殺虫剤に対する感受性低下の事例が報告されている。また、本害虫はトマト黄化葉巻ウイルスの媒介虫として知られているが、今回発見された虫体には当該ウイルスは保毒されていなかった。道内におけるトマト黄化葉巻病は未発生である。
【補足】「特に注意を要する病害虫」および「新発生病害虫」の詳細な情報については、北海道病害虫防除所のホームページに掲載しているで、そちらもご覧いただきたい。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
電話(0155) 62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp
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