めざせ!! そばの生産力向上 ~自らできる畑の土層改良~
道総研 中央農業試験場 農業環境部 環境保全グループ
空知農業改良普及センター 北空知支所
1.背景と目的
上川および空知管内を中心に作付けの多いそば畑では、土壌物理性不良による生産阻害が問題となっている。このため、生産性に影響を及ぼす土壌物理性不良要因を明らかにするとともに、近年は生産者自らが施工でき、土層改良の効果が大きい農作業機が市販されていることから、これらを用いて、土壌物理性の不良要因に対応した改良技術を実証した。
2.試験の方法
1)そば生産阻害要因の解明:空知管内のそば主要産地の土壌物理性の異なる21圃場において、そばの収量性ならびに収穫後の土壌物理性の実態を2019~2021年に調査した。
2)土壌物理性不良要因に対応した改良技術の実証:①下層が堅密な圃場(A・B・C圃場)で全層心土破砕(2連式「カットブレーカーmini」、施工深50cm、施工幅1.8m)を春に全面施工。②下層が透水不良な圃場(C・D圃場)で補助暗渠(「カットドレーン」あるいは「カットドレーンmini」、施工深40~50cm、施工間隔1.5m~2m)を春施工し隣接する明渠に通水空洞を接続した。本暗渠はA圃場のみに既設。①②ともに2020~2023年に試験を行い、無処理区(施工無し)と土壌物理性や収量性を比較した。
各試験とも、貫入式土壌硬度計による深さ90cmまでの土壌の貫入硬度、およびシリンダーインテークレート法による基準浸入能(透水性)を測定した。
3.成果の概要
1)そばの子実重は2および3層目の粘土含量並びに2層目のち密度と負の相関が、基準浸入能とは正の相関が認められたことから(表1)、下層が粘質なこと、作土直下が硬いこと、あるいは透水不良が低収の要因であると推定された。これらの要因を既往の土壌診断基準値に基づき、(ア)堅密圃場(2層目のち密度が20mm以上)、(イ)透水不良圃場(2層目および3層目の飽和透水係数10-5cm/s以下)、(ウ)堅密かつ透水不良圃場(両方を満たす)、(エ)良好圃場(上記以外)、に4区分すると、物理性不良圃場(ア、イ、ウ)は、良好圃場(エ)より子実重が低い傾向が見られた(図1)。
2)堅密圃場における全層心土破砕により、堅密層破砕の効果が十分に得られた(表2)。また、ち密度の低下は収穫後まで維持されていた。その結果、当年のそば生育は良好となり、降雨で倒伏したB圃場を除き総重が2~4割増加し、成熟期間の気象条件が良好に推移したA圃場では子実重が5割増加した。
3)透水不良圃場における補助暗渠の施工は、基準浸入能でみた透水性向上程度から、透水改善効果が十分に得られたと考えられた(表2)。また、施工で形成された土壌中の空洞が1年半以上維持される例も確認された(写真1)。補助暗渠区は無処理区と比べ当年のそば総重が2圃場とも3割増加し、成熟期間の気象条件が良好に推移したD圃場では子実重が4割程増加した。なお、圃場外から余剰水が浸入する圃場では収量性の向上効果が見られなかった。また、施工対象深に石礫を多く含む圃場では空洞が形成されず、さらに貫入抵抗値2.5MPa超の堅密層がある圃場での施工は困難であった(データ略)。
4)以上の結果を参考に、そば畑における土壌物理性の不良要因の診断方法と生産者自らが施工できる改良法の選択の手順を整理した(図2)。本診断では、堅密層は貫入式土壌硬度計による貫入抵抗値1.5MPa(ち密度20mm相当)以上、透水不良圃場は基準浸入能100mm/h未満(平成17年普及推進事項)を目安として、土壌物理性の不良要因を判定する。
4.留意点
1)補助暗渠の施工に当たっては明渠排水に接続する必要がある。
2)本研究は、委託プロジェクト研究「畑作物生産の安定・省力化に向けた湿害、雑草害対策技術の開発」により実施した。
【用語説明】
基準浸入能:圃場の土壌表層に挿入した円筒に注水し、減水速度を測定することにより現場透水性を数値化する手法(写真2)。基準浸入能100mm/h以上が転換畑大豆栽培時の改善指標値。
詳しい内容については、次に問い合わせてください。
道総研中央農業試験場 環境保全グループ
電話(0123)89-2582 E-mail:central-agri@hro.or.jp
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