極早生でたくさんとれるチモシー「北見33号」
道総研 北見農業試験場 研究部 作物育種グループ
ホクレン農業協同組合連合会
1.試験のねらい
チモシーの極早生品種は、早生品種より1週間程度熟期が早く、収穫作業の分散化に貢献できる。1980年に育成された極早生の「クンプウ」は、早生以降の熟期が遅い品種と比べて再生が良好で、マメ科牧草との混播で個体密度が維持されやすく、良質な粗飼料が得られやすい。一方越冬性や耐病性はやや劣る傾向にあった。自給飼料の生産性向上を図るため、「クンプウ」と比べて、収量が多く、斑点病抵抗性、マメ科牧草との混播栽培に必要な競合力などに優れる品種を育成した。
2.試験の方法
5栄養系の交配による合成品種法により育成した。極早生で優良な65保存栄養系からトップ交配後代検定試験で5栄養系を選抜し、多交配採種した合成1代種子に系統名「北系10314」を付し、2012年-2014年に北海道内3カ所(北見農試、ホクレン帯広試験地、北農研)で、生産力検定試験を実施した。有望と認められたため、合成2代種子に系統名「北見33号」を付し、2015年-2017年に道内各地域における地域適応性検定試験、各種の特性検定試験、現地実証栽培試験を実施した。
3.成果の概要(標準品種「クンプウ」との比較)
1)早晩性:出穂始が「クンプウ」と同日であり、「クンプウ」と同じ極早生に属する(表1)。
2)収量性:2カ年(2、3年目)合計、3カ年(1-3年目)合計の乾物収量は、いずれも多い(表2)。年次別の乾物収量は、1年目が同程度かやや多く、2、3年目は多い。番草別の乾物収量は、1、2番草が多く、3番草は同程度である(表1)。これらのことから、収量性は「クンプウ」より優れている。
3 )越冬性:越冬性は、同程度かやや優れている(表1)。早春の草勢は優れている(表1)。雪腐病に対する耐病性は“強”で同程度、耐寒性は“強”で同程度である(表1)。
4)耐病性:斑点病抵抗性は優れている(表1)。すじ葉枯病抵抗性は同程度かやや優れている(表1)。
5)耐倒伏性:やや優れている(表1)。
6 )混播適性:マメ科牧草(アカクローバまたはシロクローバ)との混播栽培における2カ年合計、3カ年合計の乾物収量は、草種別ではチモシーの収量が、またチモシーとマメ科牧草との合計収量が、ともに「クンプウ」を上回った(図1)。マメ科率は、特に2年目以降は「クンプウ」と比べ、同程度か低い値で推移した(表1)。したがって、マメ科牧草との混播栽培に必要な競合力は、「クンプウ」より優れている。
7)採種性:種子収量が多く、優れている(表1)。
8)夏季播種:夏播きでは、翌年の越冬性が良好で、1番草収量が多い(表1)。
9 )飼料成分:1、2番草で繊維の割合が同程度かやや高い傾向にある(表1)。そのほかの成分は同程度である(表1)。
10 )生育特性:草丈は1、2番草が同程度かやや高く、3番草はやや低い(表1)。出穂程度は1、2番草で同程度、3番草でやや低い(表1)。個体植条件下において、茎数が多く、穂長が長く、葉長が長く、草勢は各番草とも優れている(表1)。
4.留意点
1)適応地域は北海道全域とし、「クンプウ」と置き換える。普及見込み面積は20,000ha である。
2)年間3回の採草利用を主体とする。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研北見農業試験場 研究部 作物育種グループ 藤井 弘毅
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