性選別精液を若雌牛に種付けするタイミング
根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ
1.試験のねらい
ホルスタイン種未経産牛における目視による発情発見に基づいた性選別精液の授精時期の指針を作成する。
2.試験の方法
1 )ホルスタイン種未経産牛において、性選別精液を用いた際の授精から排卵までの時間と受胎率との関係を明らかにする。
2 )目視による発情(スタンディング:他の牛の乗駕を許容するという発情時にのみ示す行動)発見に基づいた性選別精液の授精指針を作成する。
3 )発情監視を1日2回行っている預託育成牧場1戸において、試験1および2の結果を用いて作成した性選別精液の授精指針の有用性を検証する。
3.成果の概要
1 )受胎率が50%よりも高かった授精から排卵までの時間は、種雄牛AおよびBでは、それぞれ12~30および0~18時間であった(図1)。性選別精液を用いた際の授精適期は、種雄牛によって異なることが明らかとなった。
2 )発情発見から排卵までの時間および授精から排卵までの時間と受胎率との関係から、期待値の算出方法を用いて、発情発見から授精までの時間と受胎率との関係を推定した(図2)。発情監視を1日3回行った場合では、発情発見後6~15時間に授精を行うことで、50%よりも高い受胎率が期待できることが示された。また、発情監視を1日1または2回行った場合では、推定受胎率のピークが1~4%低下し、50%よりも高い受胎率が期待できる授精時期が1~3時間早まることが示された。以上の結果に基づき、現地農場において実施可能な性選別精液の授精指針を作成した(表1)。発情監視回数の違いによる授精適期の違いは小さいため、発情監視回数の違いに関わらず、本指針は適用可能であると考えられた。
3 )作成した性選別精液の授精指針で推奨される時期に授精を行った群が最も受胎率が高かった(図3)。試験3で用いた種雄牛の授精適期は、場内試験(試験1および2)で用いた種雄牛AおよびBの授精適期の概ね範囲内であった。以上のことから、作成した性選別精液の授精指針は、種雄牛を問わず、高受胎率が期待できる指針であると考えられた。
4.留意点
1 )ホルスタイン種未経産牛に対して性選別精液を用いた人工授精を行う際の指針として活用する。
2 )本試験における発情の定義は、スタンディングが観察された場合である。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ 古山 敬祐
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