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築89年、中士幌の旧長屋 まちマイ士幌編

 「中士幌の市街地にひときわ趣のある古民家がある」。町内外の複数の人からそのような情報を聞き、現地に向かうと、昔の豪邸を感じさせる重厚感ある古民家があった。その歴史などを調べた。 帯広から国道241号を行き、中士幌郵便局前の信号を左に曲がった西2線76に古民家はある。かつて国鉄・中士幌駅があった場所の近く。冊子「中士幌のあゆみ」には1927年、故長屋今四郎さんが住宅として建てたとある。2階建てで、基礎はコンクリート、柱などはカシワが使われている。

 今四郎さんの長女今村百子さん(87)=千葉県在住=によると、今四郎さん(1894~1987年)は岐阜生まれで9歳の時、一家で開拓のため、上士幌・居辺地区(当時)に入った。住宅のある中士幌にも土地を多く所有、25年士幌線開通に伴い、駅敷地を含め、周辺の土地を売却したり、賃貸したりした。今四郎さんは駅前という立地を生かし、運送業なども行っていたが、70年に妻が死去し、息子らがいる千葉に転居した。百子さんは「当時は周辺の住宅の中でも大きくしっかりし、兄は自宅2階で結婚式を挙げた。(運送業の前)一時旅館をやっていたとも母から聞いた。戦中、すぐ横の倉庫には米軍の弾頭がいくつも打ち込まれたが、住宅の破壊は免れた」と語る。

 現所有者は、70年に購入した永井キシ子さん(88)。自宅としてはもちろん、広さを生かし、三味線や民謡の地域の集まりなどにも使用した。昨年、町内の特養に入り空き家となったが、息子2人が交代で住宅の管理などを続ける。長男の俊一さん(68)=帯広=は「土台や屋根などは当時のまま。今後も守っていきたい」と話していた=写真。(佐藤いづみ)


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