牧草サイレージの揮発性塩基態窒素含量推定方法
道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ
1.試験のねらい
通風熱乾燥によるCP 含量の過小評価を解消するため、分析方法が簡易な他成分からVBN 含量を推定する方法を開発する。
2.試験の方法
1 )サイレージの新鮮物中および60℃48時間通風熱乾燥後のCP 含量を分析し、通風熱乾燥過程でのCP の揮散量を把握する。
2)新鮮物からの抽出液を用いてアンモニア態窒素含量からVBN 含量を推定可能か検討する。
3)水分含量およびpH からVBN 含量を推定する方法を開発する。
4)3)で作成したVBN 推定式の妥当性を検証するとともにCP 含量の補正例を示す。
3.成果の概要
1 )通風熱乾燥を行ったサイレージサンプルのCP 含量は、新鮮物中CP 含量よりも平均で1.3ポイント低く(P<0.01)、最も差の大きいサンプルでは7.0ポイント過小評価されていた(図1)。
2)牧草サイレージ中のVBN 含量は次式を用いてアンモニア態窒素含量から推定可能なことが示された。
VBN 含量(% DM)=1.2424×アンモニア態窒素含量(% DM)+0.014(R2=0.980)
3 )牧草サイレージの水分含量およびpH とVBN 含量には関係性があり、水分含量75%以上かつpH5.50以下と水分含量75%未満またはpH5.51以上に分けて推定すべきと考えられた。
4)水分含量75%以上かつpH5.50以下の牧草サイレージ中VBN 含量は次式で推定可能と考えられた(図2)。
VBN 含量(% DM)=2.2×10-3× exp(1.0966×pH) (R2=0.6514)
5 )水分含量75%未満またはpH5.51以上の牧草サイレージ中VBN 含量の回帰式はVBN 含量(% DM)=0.0222×pH +0.0612(R2=0.0196)と決定係数が低かった。これらのサイレージ中のVBN 含量は0.0~0.4%と狭い範囲で変動していることから、平均値を採用し、一律0.15%とした(図2)。
6 )VBN 含量の実測値から推定値を減じた残差の平均は0.05で標準偏差は0.12であった。VBN 推定値をCPに換算し、乾燥物CP 含量に加えたところ、CP 含量の過小評価の平均は0.08ポイントまで圧縮された(図3)。
7 )VBN 推定値によるCP 含量および各成分の補正方法の例を表1に示した。計算方法は次の通り。各成分を原物中の値にして以下の計算を行う。DM はVBN 含量を加算し、補正DM とする。原物中CP および溶解性粗タンパク質(CPs)にVBN に6.25を乗じた値を加算する。原物中の各成分含量を補正DM で除し乾物中含量とする。補正した各成分含量の合計値が100となるようNFC を減ずる。
4.留意点
本成果は道内の飼料分析機関がVBN 含量を実測せずにCP 含量の補正を行う際に利用する。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ 角谷 芳樹
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