ぬかびら源泉郷「老舗温泉 手作りの宿 中村屋」 まちマイ上士幌編
今回の「まちマイ」は「上士幌編」。熱気球やふるさと納税取り組みなどで全国的に知られるが、「まちマイ」ならではの視点を盛り込み4日間にわたって特集する。初回は十勝でも有数の温泉地「ぬかびら源泉郷」。オーナー親子が自らの手で改修し続ける施設やコイ釣り名人の民宿経営者の話題など、人口94人の小さなこの地域には「すごい」があふれている。
中村準一さん・健次さん
自力の改装 まるで古建築
創業84年の温泉宿「中村屋」。2代目宿主の中村準一さん(64)は2000年から、長女の夫・健次さん(38)とともに自らの手で建物を改修している。「お客さまがまた訪れたくなるような宿に」との思いで補修や補強、デザインなどを刷新し、古き良き建物に新たな魅力を加え続ける。
団体旅行の客足が鈍り、15年前に個人客向けにかじを切った。当時は新館・旧館合わせて客室50室に約200人の収容規模。だが、個人客向けには大きすぎた。思い切って鉄骨コンクリート造り4階建ての新館を閉鎖した。
ただ、木造2階建ての旧館は当時で築50年近く。屋根や水回りなど至るところに傷みも。改修に資金を回せば経営が圧迫される。「工務店に丸投げせず、自分でやってみよう」との決断から全てが始まった。
とは言っても、「当時は大工仕事の知識が皆無で、どこまでやれるか不安もあった」と中村さん。大工の知人から手ほどきを受け、その後はひたすら独学。手始めにトイレや屋根を補修し、徐々に作業域を拡大、今では電気配線工事など資格が必要な作業を除きほぼ全て自力でこなす。
これまでに客室全17室のうち7室でリフォームを終えた。壁の断熱や防火・防音対策を施すだけでなく、大幅に間取りも変更。古材を多用し、古建築物風に仕上がった姿には素人の手仕事を感じさせない。健次さんは「二つとして同じデザインはない」と胸を張る。
客の不在時にコツコツと改修を続ける2人。客室デザインに知恵を絞る健次さんは「お客さまからの反響がダイレクトに伝わる分、喜びはひとしお」、中村さんは「リピーターから『少しずつ変わっていくのが楽しみ』と喜ばれるのが励み」と笑う。宿泊客に選ばれるための2人の宿作りに終わりはない。(杉原尚勝)
2人1室利用の1泊2食付きで9000~1万5000円(税別)。電話01564・4・2311。
<1919年発見、かけ流しの湯 ぬかびら源泉郷>
温泉の発見は1919(大正8)年3月。泉質はナトリウム・塩化物-炭酸水素塩(重曹)泉で、「肌がなめらかになるだけでなく、飲用で胃腸病にも効くとされている」と同組合。湯温は50~60度と高く、全施設(宿)が源泉掛け流し温泉が楽しめるのがウリ。宿泊施設は国道273号の糠平市街地周辺に集中しており、組合加盟の7施設では宿泊者対象に宿泊施設以外の温泉も無料で入れる「外湯めぐり」サービスも実施している(実施時間帯は施設によってそれぞれ)。現在ある施設で最も歴史があるのは湯元館で大正14年開業。
同組合加盟の主な施設は次の通り(〈外〉は外湯めぐり実施施設、市外局番はいずれも01564)。
▽糠平館観光ホテル〈外〉(4・2210)
▽元祖湯元館〈外〉(4・2121)
▽糠平温泉ホテル〈外〉(4・2001)
▽ペンション森のふくろう〈外〉(4・2013)
▽中村屋〈外〉(4・2311)
▽プライマルステージ(9・4169)
▽山の旅籠・山湖荘〈外〉(4・2336)
▽東大雪ぬかびらユースホステル〈外〉(4・2004)
▽民宿グリーン糠平(4・2127)
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