地図で見える化!根釧地域のアルファルファは いつまでに播けばいいのか?
道総研根釧農業試験場 研究部 飼料環境グループ
1.試験のねらい
播種後の気象条件、土壌凍結深を考慮して根釧地域におけるチモシー主体アルファルファ混播草地の播種晩限をマップ化して、地域内差を明らかにする。
2.試験の方法
1)播種年の気象条件・土壌凍結深と播種翌年の定着・越冬状況の関係をモデル化する。
2)現在・将来予測で利用可能な最大土壌凍結深推定モデルを作成しマップ化する。
3 )播種晩限推定モデルおよび最大土壌凍結深推定モデルをもとに、根釧地域におけるチモシー主体アルファルファ混播草地の播種晩限をマップ化して、地域内差を明らかにする。
4)気候変動条件(最新MIROC5/ RCP4.5)下での播種晩限を将来予測する。
3.成果の概要
1)-(1 )播種年のチモシー主体アルファルファ混播草地の生育量は、干ばつ状態の指標となる先行降雨指数(API)を用いて補正した有効積算気温と強い関係がある。さらに、播種翌年1番草乾物アルファルファ率を6.59%(アルファルファが定着したとみなす値)とするために確保すべきAPI補正有効積算気温は、最大土壌凍結深30cm 未満では673℃、同30cm 以上では784℃であった(図1)。
1)-(2 )上記のAPI補正有効積算気温を確保することにより、アルファルファについて標準的な越冬性を示す「5」以上が期待できた(図2)。
2 )日平均気温0℃以下の降水量を積算し30mm に達した日の前日までマイナス気温を積算した積算寒度F20nを用い、Dmax=2.0×√F20n(RMSE:7.3cm)の最大土壌凍結深推定モデルを得た(図3)。さらに、根釧地域の最大土壌凍結深を1km メッシュで推定した。その際、農耕地ではメッシュ気温が実測気温より高いことを考慮し、土壌凍結深を補正した(Dmax’=2.52・Dmax-26.69)。
3 )1)-(1)、2)の結果を用い、目標とするAPI補正有効積算気温を確保できる確率別(50~100%、10%毎)に播種晩限をマップ化した(図4)。気象条件が悪いところでは7月下旬、気象条件の良いところでも8月中旬までに播種を終えるべきであると考えられた。
4 )気候変動条件下の将来(2081-2100年)における根釧地域の播種晩限平均値は8月15日と予測され、高温年であった2010年の播種晩限平均値8月13日を大きく超えるものではなかった。
5)草地の定着にはマップを参考に地域に応じた播種晩限を遵守し播種することが重要と考えられた。
4.留意点
1)根釧地域におけるチモシー主体アルファルファ混播草地の適正な播種作業の目安として活用する。
2 )任意の圃場の播種晩限を確認できるように、播種晩限マップはGoogle Earthに読み込み、重ね合わせ表示可能な形式(KMZファイル)で公開予定である。
3 )本成果は、播種量チモシー1.8kg/10a ・アルファルファ0.5kg/10a 、除草剤処理同日播種法での播種、播種年収穫・掃除刈りなし、殺菌剤散布による雪腐病防除条件下で行った試験の結果に基づく。
4 )本成果は、農林水産省委託プロジェクト研究「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のためのプロジェクト」により得られたものである。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研根釧農業試験場 研究部 飼料環境グループ 牧野 司
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