大樹に宇宙エネ基地構想 太陽光で電力、水素 JAXA 12年度第1弾完成目指す
【東京】宇宙航空研究開発機構(JAXA)が大樹町で、宇宙エネルギー開発基地の建設構想を進めていることが、28日までに明らかになった。宇宙空間の巨大集光鏡で集めた太陽光エネルギーをマイクロ波やレーザーの形で地上に送り、電力や水素を得る計画の技術実証施設。第1弾の施設は2012年度までの完成を目指す。関係者は「大樹でシステムを完成させ、エネルギーの安定供給を目指す。輸出すれば世界経済の発展、地球温暖化の回避に貢献できる」と話している。(深田隆弘)
JAXAは地球温暖化を回避し、安定的・大量に供給できるエネルギーの利用法を研究、30年ごろの実用化を目指している。原子力発電を補完するエネルギー源と位置づけている。
無尽蔵に得られる太陽光エネルギーを、地上約3万6000キロの静止軌道上に装置を打ち上げて収集。マイクロ波かレーザー光に変換して地上か海上の基地に伝送、1基で原発並みの1ギガワットの電力を得る仕組み。水素も作り出し燃料電池などに応用する。地球温暖化の要因の二酸化炭素はほとんど排出されない。
JAXAはこれまでに、宮城県内の施設でレーザー、マイクロ波の伝送基礎実験や受電アンテナの開発を行ってきた。レーザーの地上実験では送電出力数ワット、送電距離500メートルを達成した。
実用化に向けては送電電力を高め、距離を伸ばす必要があるが、地上で実証するには現施設は手狭。広大な敷地確保が見込め、宇宙関連施設の誘致に熱心な大樹町を、新たな開発基地の候補地に選んだ。
構想では来年度、航空公園内を中心に着工。当初5年間に約500億円を投入し実験装置を開発、基地を建設する。地上や飛行機、飛行船へのエネルギー伝送実験(送電距離数キロ−10キロ)を行う。送電電力は数十−数百キロワットで、5年ごとに順次拡大。22年までに1000倍に当たる数十メガワット−数百メガワットを目指す。宇宙でも実証を進める計画だ。
関係者は「中国やアフリカ諸国などの無電力地域へのエネルギー供給にも生かせる。地球全体のエネルギー需給を考えた夢のある技術を十勝・大樹で必ず開発したい」と話している。