十勝農業の発信に向けて
昨年(2015年)の十勝農業を振り返ると、2つの大きな動きがありました。管内24農協の農産物取扱高が初めて3000億円を突破し、3233億円に上り、十勝農業の力強さ、ポテンシャルの大きさを示しました。畑作は、天候がおおむね良好に推移し、多くの作物が豊作となりました。小麦は、「ホクシン」の後継で多収性品種「きたほなみ」が実力を発揮し、収穫量は前年を46%上回る30万トンという大豊作となりました。ビートの糖度は、2009年以降では最高の17・6%に達しました。酪農・畜産も乳価アップや牛の販売価格の高値などで好調でした。
一方、環太平洋連携協定(TPP)は昨年10月、米国アトランタで開かれた閣僚会議で大筋合意し、5年半に及ぶ交渉に終止符を打ちました。今後、TPPによる関税削減の影響は必至です。
十勝農業は、先人のたゆまぬ努力によって規模拡大と効率化を推進しながら技術力を蓄積し、農家1戸当たりの平均経営面積は43㌶とEU諸国と肩を並べる水準に達しています。今後は、グローバル化の中で「攻めの農業」への取り組みが課題として挙げられます。政府のTPP対策を取り込みながら、農作物の安全性の追求や高付加価値化、消費者との連携、「十勝川西長いも」に代表されるような農作物の輸出など農業を質的に強化するとともに新たな挑戦が求められます。
農業を営まれている皆さんには大変な状況ですが、見方を変えれば、グローバル化という荒波の中で十勝農業がさらに飛躍できるか、力量が試されているともいえます。
十勝農業フォーラムは、十勝の基幹産業である農業振興を目的に最新の農業技術を広く普及しようと、1993(平成5)年から道内の研究機関が取り組んでいる各種研究成果と、農業関連記事をまとめた「農業新技術・十勝農業記事ハイライト」を毎年、発行し、管内農業者へ無料配布しています。
24年目となる今回は、道立試験研究機関の研究成果21件を紹介、昨年3月から今年2月まで十勝毎日新聞社に掲載された農業関連記事を収めました。TPPの影響を探った企画記事などを通じ、十勝農業の方向性を考えるヒントにしていただければ、幸いです。
最後になりましたが、本冊子の編集に当たり、協力をいただいた道立農業試験場の皆様に心からお礼を申し上げ、発刊のあいさとします。
十勝農業フォーラム
代表 林 光繁