泥に漬かる町復旧へ　台風１０号被災　

水に漬かった家具などを住宅の外に出す住民たち（１日午前８時４０分ごろ、芽室町西町。塩原真撮影）

住民、力合わせ片付け
　台風１０号による大雨で８月３０日夜から３１日未明にかけて河川氾濫など大きな被害を受けた十勝管内では、広範囲で住宅浸水が起きた芽室や清水などで町が被害状況の把握に務める一方、住民が後片付けに追われる姿が見られた。住宅が損壊、浸水した住民の避難生活は続き、行方不明者の捜索も懸命に行われた。台風災害の爪痕は深く十勝に刻まれている。

「順番にやるしかない」　芽室
　芽室川の氾濫で浸水被害に見舞われた芽室町の芽室公園西側の住宅では１日午前、一時は腰の高さまであった水が引き、住民は朝から庭や玄関先に残った泥の除去作業に追われた。

　西町の和田正毅さん（７２）は８月３１日午後に妻（７０）、次男（３１）と避難先の総合体育館から戻り、１日は午前７時から作業を始めた。車庫の中にあった乗用車は半分の高さまで泥に漬かった。「ここに住んで３０年近くになるが、こんな災害ないね。車は多分駄目だと思う」。玄関も泥水で汚れたが、「家の中に入らなかっただけ幸せ。（できることを）順番にやっていくしかない」と自分に言い聞かせるように語り、ホースで玄関先の泥水を洗い流していた。

　一帯は道路一面が泥でぬかるみ、住民が水に漬かった洋服ダンスや椅子などを外に運び出していた。

　町は町民の生活支援を最優先に取り組む方針で、汚泥についても宮西義憲町長は「町の災害復旧工事として処理に入れるよう、直ちに進めたい」とし、重機を投入した作業を始めた他、職員によるスコップ隊も編成している。

清水町内で泥かきを行う清水中２年の生徒ら（１日午前９時５０分ごろ、新井拓海撮影）

休校中の生徒「少しでも力に」　清水
　清水町の市街地で氾濫したペケレベツ川の水は１日午前までに引き、住民が泥の除去作業に汗を流した。

　臨時休校となった清水中の梶本凌佑さん（２年）は、１１人の生徒や教員と一緒にスコップを使い、１０センチ以上も道路にたまった泥を取り除いた。

　生徒は梶本さんが携帯電話の通話アプリで呼び掛けた友人たちで、梶本さんは「友達の家が流されている様子をテレビで見て、少しでも力になりたい」と話していた。

　町内では断水解消のめどが立たず、町内５カ所の給水所はペットボトルやポリタンク、鍋などを持った住民で長蛇の列ができた。高野転子さん（５５）は「トイレを安心して使えないので不便。いつまで断水が続くのか」と困っていた。

削られた住宅地危険な状態続く　清水
　清水町では、氾濫したペケレベツ川の流れが上流から流れ込んだ木や土砂で変わり、住宅街の一部を浸食している。市街地西部では、基礎部分が川の流れで削り取られた住宅が川の中に落ち込んだり、基礎が浮いて傾いたりして危険な状態が続いている。

　本通西１０にある田村里美さん（４８）の住宅は、南側に流れていた同川が徐々に迫り、２棟の車庫を押し流した後、土台の土がさらわれて１メートルほど川に向けて落ち込んだ。２世帯がつながった平屋で５人が住んでいた住宅は床が抜け、家に入るのは危険な状態だ。

　田村さんの家族は１日、上流から流れて家に引っかかった木を取り除き、物置で使えそうな物を整理した。家族は３０日夜に弟夫婦の自宅に避難した。「川が『ゴォー』とうなるような大きな音をさせていたのが忘れられない。住むのは難しいかもしれないが、これ以上雨が降らないでほしい」と願っていた。

仕事を休んで後片付け格闘　新得
　市街地の一部が冠水した新得町内では、８月３１日午前に水が引き始め、避難所などに身を寄せていた住民は自宅に戻り、生活再建に向けての準備が始まった。

　氾濫した中新得川沿いに住宅があり、玄関前まで大量の泥が流れ込んだ林業山口大輔さん（３５）は、仕事を休んで後片付けに追われていた。「朝から４時間ずっと同じ作業の繰り返し。物置まで水が入り込んでいる」と途方に暮れていた。

　町内では現在も２カ所で避難所が設置されており、自宅に戻れない人もいる。

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