茨城のベンチャー企業が大樹で航空宇宙実験に参入
【大樹】係留気球や飛行船の製造から運用までを手掛ける「スカイプラットフォーム」(茨城県、秋永和寿社長)は、大樹町多目的航空公園を実験拠点にした事業展開を図る。20日から通信実験のために係留気球を打ち上げる他、来年度は自律飛行船の開発実験も計画している。同公園を舞台にさまざまな航空宇宙実験が展開される中、新たな実験チームが加わる。
同社は2010年4月に設立されたベンチャー企業。資本金720万円。従業員は6人で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などで経験を積んだ研究者が名を連ねる。秋永社長は大手電機メーカーに38年間勤め、衛星通信設備の研究・開発に携わった。01~04年に大樹町の同公園で行われ、全長68メートルの飛行船が高度4キロを飛行した国の「成層圏プラットフォーム研究」(定点滞空飛行試験)にも関わった。
主な製品は、環境観測用係留気球や、目的地まで自動で飛ぶことができる自律飛行船、搬送用空間ロボット(飛行船)。このうち同気球の利用が好調で、今年8月には国内の研究機関がインドネシアで実施した温暖化ガス観測の際に使われた。今回の大樹での通信実験にも活用する。
秋永社長は7日、同公園で行う通信実験の事前準備のため、実験支援を担う「ヒルテイク」(栃木県)の蛭田忠孝社長とともに来町した。同実験は非公開だが、12月中旬まで続き、来年度以降も継続していく予定。大樹町は係留気球や飛行船の飛行において最適な場所とし、「設備や環境など全国を探しても大樹のようないい場所はない」(秋永社長)という。
来年度は他にも、自律飛行船の開発実験を大樹で行う計画。飛行船の飛行技術は欧米に比べ、日本はまだまだ遅れており、秋永社長は「大樹で実験を続け、飛行技術を習熟していきたい」と話している。(佐藤圭史)