元池田町長・丸谷さん 旅立ちも独創的に ワイン130本ひつぎへ注ぐ
【池田】十勝ワインの生みの親の元池田町長、丸谷金保さん(享年94)は5日、町清見の町営墓地に土葬され、ひつぎの中に注がれた約130本の十勝ワインとともに永遠の眠りについた。20年以上も前にひつぎを用意し、土葬ができるかを自身で調べるなど用意周到だった。参列者は「丸谷さんらしい最期だ」と改めて悲しみを募らせた。(写真は遺族らから提供)
丸谷さんは生前、土葬について池田町の担当者に問い合わせていた。「ワイン城のある清見の土になりたかったのではないか」と関係者は推測する。町によると、法律は土葬を禁じていない。条例で禁止している自治体もあるが、多くの自治体は火葬を前提としてきたため土葬への対応はされていないのが現状。
同町初のケースとなった町は、他の自治体の条例などを参考にし、地上からひつぎの上部まで2メートル以上の深さを確保することを条件に今回の土葬を許可した。実際に穴は2・7メートル掘られた。町町民課は「法律で禁止規定がない以上、認めざるを得なかった」とする。
帯広市でも土葬は禁止しておらず、過去には土葬を認めたケースもある。ただし、衛生面や埋葬用地の確保から火葬を奨励しているのが実態で、市内17墓地中2墓地(中島霊園、つつじが丘霊園)は土葬を禁止している。
土葬に参列した元町ブドウ・ブドウ酒研究所職員の広瀬秀司さん(63)は「丸谷さんは入院中も池田町と十勝ワインの将来を心配していた。ワイン町長にふさわしい最期のセレモニーになった」と話した。
ひつぎは、オーク(ナラ)材で厚さが3センチ。節がなく、正目取りのために狂いが少ない、かなりの良質の材を使っていた。ふたにはワインを注ぐための直径4センチほどの穴を開けていた。同町は十勝産のオーク材でワインだるを製作したことがあり、関係者は「原木は管内で調達したのではないか」とする。
長男智保さんはひつぎにワインを注ぎ、「死してなお十勝ワインを売り込み、応援しようという父の遺志の表れと受け止めたい」と語った。智保さんはセイコーマート社長としてワインの販売に力を入れ、次女田辺由美さんは総合ワインコンサルタントとして国際的に活動。丸谷さんのワインに寄せる情熱は子供たちに受け継がれ、日本のワイン文化を支えている。(平野明、小縣大輝)
◆故丸谷金保さんについて
・「再生・ワイン城 上 シンボルへの思い」-十勝毎日新聞電子版(2005/04/12)
・「プロジェクトX裏話を披露 十勝ワイン友の会 元町長の丸谷さん、大石さん」-十勝毎日新聞電子版(2005/12/12)
・「池田町再建の道のりつづる 元町長、丸谷金保さん回想録出版」-十勝毎日新聞電子版(2007/10/05)
・「編集余録 丸谷さん」-十勝毎日新聞電子版(2007/11/04)
・「あの日あの時 十勝ひと物語 元池田町長丸谷金保さん 1」-十勝毎日新聞電子版(2008/06/24)
・「あの日あの時 十勝ひと物語 元池田町長丸谷金保さん 2」-十勝毎日新聞電子版(2008/06/25)
・「あの日あの時 十勝ひと物語 元池田町長丸谷金保さん 3」-十勝毎日新聞電子版(2008/06/26)
・「あの日あの時 十勝ひと物語 元池田町長丸谷金保さん 4」-十勝毎日新聞電子版(2008/06/27)
・「あの日あの時 十勝ひと物語 元池田町長丸谷金保さん 5」-十勝毎日新聞電子版(2008/06/28)
・「セイコーマート新社長・丸谷氏に聞く 地域密着で差別化を」-十勝毎日新聞電子版(2009/05/19)
・「元池田町長の丸谷金保さんが地方自治熱弁」-十勝毎日新聞電子版(2010/05/15)
・「ワイン文化広めたい」セイコーマート・丸谷社長に聞く-十勝毎日新聞電子版(2010/12/16)
・「台風12号被災ゆかりの地を案じる 元池田町長・丸谷さん」-十勝毎日新聞電子版(2011/09/08)
・「池田出身・田辺由美さんのワイン講座が20周年-十勝毎日新聞電子版(2011/12/02)
・特集「山ブドウからの出発~十勝ワイン50周年」全5回-十勝毎日新聞電子版(2013/06/12~16)
・300ヘクタールの「山ブドウの森」を 丸谷さんが構想-十勝毎日新聞電子版(2013/06/20)
・池田出身のソムリエ田辺さん、帯広で講演 十勝ワイン50周年-十勝毎日新聞電子版(2013/06/27)
・池田出身の田辺さん、国際ワインコンクール初開催 東京-十勝毎日新聞電子版(2014/01/29)
・編集余録「ああ丸谷さん」-十勝毎日新聞電子版(2014/06/04)
・丸谷さんしのびあす再放送 NHK「プロジェクトX」-十勝毎日新聞電子版(2014/06/13)