「はやぶさの偉業」宇宙のまち・大樹へ
小惑星探査機「はやぶさ」が大樹にやって来る-。昨年6月、7年間60億キロに及ぶ飛行の末に帰還し、世界初の偉業として小惑星イトカワのサンプル(微粒子)を地球に持ち帰った「はやぶさ」。その微粒子が収められていた再突入カプセルの特別展示(実行委員会主催)が23~27日、大樹町生涯学習センター(同町双葉町6)で行われる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とするプロジェクトチームが幾多の苦難を乗り越えながら、高度な技術実証に挑んだ「はやぶさ」の成果などを、展示を前に紹介する。(佐藤圭史)
日本の科学技術結集
苦難乗り越えミッション成功
はやぶさプロジェクトの中で、JAXAは小惑星イトカワのサンプル入手を最終目標とする8つのミッション=別表=に挑戦した。達成すると“世界初”となる高度な技術実証が含まれていた半面、リスクも高く、一時は、はやぶさが行方不明になるトラブルにも見舞われた。プロジェクトチームはJAXAを中心に、全国の大学や企業など100機関以上に及んだ。日本の科学技術力が結集し、最終的には全てのミッションを成功させた。
はやぶさは本体が1メートル×1・6メートル×2メートルの箱形で、ソーラーパネルが羽のように付いている。電気推進で極めて燃料効率の高いイオンエンジン、自律誘導航法に必要なカメラやレーザー高度計、大気圏突入時の厳しい環境からサンプルを守る再突入カプセルなど、最先端の科学機器が搭載された。
2003年5月に鹿児島県からM-V-5号機で打ち上げられ、往路は目立った問題もなく、「小惑星の科学観測」まで5つのミッションを成功させた。特に、地球の引力を利用して加速する「スイングバイ」は、イオンエンジンにより行ったことで世界初の快挙となった。
しかし、イトカワ到着後から、燃料漏れ、地球側との通信途絶といった不具合が相次ぎ、一時は2カ月半ほど行方不明となった。地球への帰還も、予定の07年6月から3年間延長された。
満身創痍(そうい)の状態ながら、はやぶさに与えられた最後のミッションが大気圏突入だった。大気圏に突入する物体は、前面で空気が圧縮され、高温にさらされる。はやぶさの場合、本体は高温で燃え尽き、再突入カプセルが、イトカワから採取した微粒子を地上まで守った。
今回入手できた小惑星の微粒子は、太陽系形成の解明に役立つとされ、現在は全国の大学などが初期分析を進めている。
大樹で特別展示されるのは、実物の再突入カプセルの構成物である▽インスツルメントモジュール(カプセル本体部分)▽搭載電子機器▽パラシュート▽背面ヒートシールド(耐熱材)-の4点の他、プロジェクトの内容を伝えるパネルなど。前面ヒートシールドは既に分析を始めているため、実物は展示されない。
特別展示に向け、大樹町は再突入カプセルの開発を担当したJAXAやメーカーの研究者を招いた講演会を町内で順次開くなど、町民の関心も徐々に高まっている。“宇宙のまち”として、カプセルの展示を待ちわびている。
<はやぶさのミッション>
■イオンエンジン稼働開始(3台同時運転は世界初)
■イオンエンジン一定期間(1000時間)稼働
■地球スイングバイ(電気推進によるスイングバイは世界初)
■自律航法による小惑星イトカワとのランデブー
■小惑星の科学観測
■小惑星にタッチダウンしてサンプルを採取
■カプセルが地球に帰還、大気圏に再突入して回収
■小惑星のサンプル入手