You start something~人の気配
北海道でライブをしたことのある街は10都市を超える。もちろんそんなに多い都道府県は他にはなく、改めてその広さに驚く。同時に、それぞれの街にそれぞれの文化があり、面白い人がいてこそだということを忘れてはいけない。
先日、初めてライブをした街がまたひとつ増えた。千歳市である。いうまでもなく、新千歳空港のある街で、そういう意味では何度も足を踏み入れてはいるが、ライブをしたのはこの春が初めてだった。
苫小牧で「You Said Something」というバンドをやっている澤谷恒一郎さんから、「千歳市にライブハウスを作っているので、オープン記念にぜひライブをしてほしい」と言われたのが昨年の秋。遠くの街で始まろうとしている「何か」をこの目で見たいと思った。「何か」とはライブハウスそのものではあるが、それだけではなく、そこに至った想いに触れたかった。彼に会いに行ったと言っても過言ではない。
小さな箱を、自分と仲間のアイデアでライブハウスに変えていく。自身がバンドをやっていて、さらにライブハウスで働いていた経験があるからこその、細かな配慮が感じられた。自分の城を輝かせることは、自分の人生を輝かせることに他ならない。「STUDIO ZOOWEE」と名付けられたライブハウスでの初ライブは大成功。その日のビールはとてもおいしかった。
空港のある田舎町。そんなイメージだけで知ったような気になっていた。ライブのオファーがあった瞬間、その事実に気がつき、どうしても千歳市でライブをしたくなった。そして、澤谷さんに「おめでとう! 楽しくなるね!」と言いたかった。「過去をかすめた風が意志に変わり、ここで重なる声が位置に変わる」と歌った『Will』という曲を勝手に送ろう。始まりの歌である。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。帯広柏葉高卒。Riddim Saunterを解散後、ソロ名義での活動を続ける。V6への楽曲提供が話題になるなか、最新作『KOKORO EP』はひとりでレコーディングをした意欲作。グッズと共にオフィシャルショップで販売中!