ドラマ「ｓｉｌｅｎｔ」などで手話に脚光「もっと関心を」
ドラマ効果で注目が集まる手話。子育て手話サークル「ピングー」では、ろう者の丸山さん（右から２人目）らが手話を教えながら交流する
昨年から今年にかけて、テレビドラマや映画で聴覚障害者が登場する作品が相次いでいる。特に昨年１０～１２月に放送されたテレビドラマ「ｓｉｌｅｎｔ（サイレント）」（フジテレビ系）は若者を中心にヒットし、手話に注目が集まっている。十勝管内のろう者はドラマの放送以降、一般の人の対応に変化を感じるとし、「これをきっかけに耳の聞こえない人や手話にさらに関心を持ってほしい」と期待を寄せている。
「ｓｉｌｅｎｔ」では人気アイドルグループＳｎｏｗ Ｍａｎの目黒蓮さんが手話を使う中途失聴者を演じ、一躍話題になった。動画配信大手ネットフリックスが昨年１１月２４日から世界配信しているドラマ「Ｆｉｒｓｔ Ｌｏｖｅ 初恋」でも、佐藤健さん演じる並木晴道が手話でろう者の妹とやりとりしている。
昨年３月の米アカデミー賞では、聴覚障害がある両親や兄と暮らす健聴者の少女を描いた米映画「Ｃｏｄａ コーダ あいのうた」が作品賞などを受賞。１７日にスタートしたテレビドラマ「星降る夜に」（テレビ朝日系）では、北村匠海さんが聴覚障害者を演じ、健聴者とのラブストーリーが繰り広げられる。
十勝管内では共生社会の実現を目指し、新得町が２０１４年、全国の町村で初めて手話条例を制定。帯広市は１６年に市手話言語条例を制定した。２０年度にスタートした「おびひろ市民学」の一環で、市内の小・中学生を対象に手話の授業も行われている。
同授業の講師を務めるろう者の丸山清美さん（５７）＝帯広市＝は「これまでは手話に興味を持たない子もいたが、ｓｉｌｅｎｔが始まって以降、関心の高まりを感じる。ドラマを見て覚えた手話を披露してくれた子もいた」と変化に驚く。
難聴者の早川理沙さん（３６）＝芽室町＝は「１年前は病院や薬局で手話や携帯電話での対応が苦手な人がたくさんいたが、今ではジェスチャーをしてくれるなど対応がスムーズになった。衝撃でした」。飲食店での会計時に手話で金額を示されたこともあったという。
丸山さんが０７年に創設した市内の子育て手話サークル「ピングー」は母親１５人が所属し、４人がろう者。子どもの学校や病院などについて情報交換し、手話を学びたい人に簡単な手話を教えることにも取り組んでいる。昨年９月に加入した市内の深澤芽衣さん（３２）は「新しい言語を学んでいる感じです」と楽しみながら手話に親しんでいる。
ろう者の田中由香里さん（４２）は「新しく始まるドラマも楽しみ。手話にもっと関心が集まればうれしい」と希望を膨らませる。
同サークルは帯広市グリーンプラザで毎週木曜午前１０時～同１１時半に会員や子どもたちが交流。代表で帯広聾学校教諭の長谷地まどかさん（３４）は「気軽に見学してもらえるとうれしい」と話している。
別の手話サークル２団体も同プラザが拠点。毎週水曜午前１０時～正午に「帯広手話サークル手と手」、同午後７時～同９時は「帯広グルッペ手話の会」が活動している。（松村智裕）
ドラマ「ｓｉｌｅｎｔ」などで手話に脚光「もっと関心を」
