人の気配「旅人を招く街と人」
全国でライブを続けていると、一見意外とも思える街でのライブが定着することがある。広島県福山市もその一つ。遠く離れた北海道では、その名前を初めて聞いたという人も少なくないだろう。そのくらいの大きさの街である。
大都市ではない福山で毎年のようにライブができているのは、ニシオフミヒロさんの存在が大きい。「POPLIFE」というチームを仲間と立ち上げ、さまざまなバンドを東京から呼んでいる。イベント会社ではなく個人レベルでやっている人の中では、全国トップクラスの実績があるのではないだろうか。それがまた次の信用につながっていく仕事である。
ニシオさんはそれが分かっているからこそ、ミュージシャンに対しての感謝や敬意を忘れない。そして、そんなニシオさんの思いを感じているからこそ、ライブをする側もまた福山に行きたくなる。終わらない相互関係。理想の形である。
「福山は場所が恵まれている」とニシオさんが話してくれた。確かに大阪から福岡に行くときに福山は真ん中にはなる。そういう意味で、その辺りで1本ライブを入れたくなるというのも的外れではない。
ただ、それだけでは福山でのライブが多くなる理由としては不十分である。やはりそこには人の気配が漂っているのだ。尾道(おのみち)やしまなみ海道も近く観光地としても楽しめる福山は、手招きをしてくれる人がいることで音楽旅も楽しめる街になっているというわけだ。
今でこそ当たり前になっている僕の弾き語りライブは約10年前の福山で始まった。そこで生まれたと言っても良い『TWIN SONGS』という名のイベント。今回はそのテーマソングを聴いてもらおうと思う。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。昨年のV6への楽曲提供が話題。『Sunny』や『雨』など、新曲のリリースが続く。