人の気配「とあるミュージシャンの生き方」
音楽活動をしながら、その他の仕事もする。「いつかは音楽で飯を食うぞ」とつぶやきながら夢を追いかけている人もいれば、「好きな仕事をしながら音楽」という人も周りには多い。昨今の言い方をすれば、後者は「二刀流」ということになるだろうか。
友人のミュージシャンの中でも、早くからそのスタイルを確立しているカズ君こと黒田教行という男がいる。宇都宮を拠点にCALENDARSというバンドを続けながら、「マツガミネコーヒービルヂング」というカフェを経営している。東京ではなく、あえて地元の宇都宮で音楽を続けていることも含めて、僕が経験していないこと、できなかった決断をしている友人と話をするのはとても楽しい。
現在は3店舗を経営するカズ君にも、大小さまざまな苦悩があることは想像に難くない。しかし、それをたまにしか会うことのない僕らには見せることなく、いつも笑顔で迎え入れてくれる。当たり前に思えるかもしれないが、そのバランス感覚が実は難しいと僕は思っている。自分のことをペラペラと話し続けることはしないが、続けている努力や、店や街に対する愛をしっかりと感じることができるのもまた、彼の自然な魅力のひとつである。
そんな彼が大切にしている店で、よく弾き語りライブをさせてもらっている。店内はもちろん、コロナ禍に突入して半年後には屋上のスペースを使ってライブをした。誰も正解が分からないような事態になっても、信頼できる仲間がいれば意見を交換しながら動き続けられることを再確認したこの2年間。感謝があふれる。
今回はカズくんが特別な曲と言ってくれた『夜の終わり』をここに残しておく。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。昨年のV6への楽曲提供が話題。新曲『雨』をリリースし、全国11本のツアーを開催中!