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離ればなれの妻へ、80歳のラブレター 22日は「いい夫婦の日」

病室の美恵子さん(左)に送った巌さんの“ラブレター”

 難病で体が不自由な音更町の西川巌さん(84)と妻の美恵子さん(83)。この5月、美恵子さんが介護の心労で急に倒れて入院した。自宅で1人で生活できない巌さんも、町内の福祉施設へ入ることに。離ればなれの生活が1カ月余り続き、妻の身を心配した巌さんは手紙を送ろうと思い立った。それは巌さんが初めて書いた“ラブレター”だった。22日は「いい夫婦の日」。

 巌さんは、脊椎(せきつい)を支える靭帯(じんたい)が骨に変化して神経を圧迫する難病を患っている。今年に入って足腰の痛みが増して歩くのもままならず、眠れない日が続いた。子どもがいない2人は典型的な「老老介護」。美恵子さんは心配して夜のトイレも付き添った。

 寝不足で体が休まらない美恵子さんは、5月下旬に体調を崩して帯広市内の病院に入院した。「家内は元気だと思っていたのに急に倒れてしまって。ずっとおんぶに抱っこだったから」。巌さんも老人ホームに入所することになった。

 結婚して60年近く、長く離れて暮らすのは初めてのこと。電話嫌いの巌さんだが、声が聞きたくなって施設から何度も携帯電話にかけたが、美恵子さんにつながらない。「電話のかけ方を忘れてしまったのかも」。コロナ禍で外出ができず、不安を募らせた巌さんは手紙を書くことにした。

 便せんがないので手元にあったA4判のコピー用紙を使った。「お母さんとバラバラになって、早くも一ケ月と九日がたちましたネ」「いつも『お父さん、お父さん』としつこく呼ぶお母さんの姿がないのは淋(さび)しいものです」。何枚にもなり紙をつないだ手紙は、長さ2メートルの巻物のようになった。文の最後には「八十才のラブレター」と書いた。

 美恵子さんは入院中、携帯電話は禁止だと思い電源を切っていた。「びっくりした。障子紙みたいな長さで、読んでいたら同室の人や看護師にも面白がられて」と笑うが、夫の気持ちがうれしかった。すぐに連絡して、退院した7月下旬まで、どちらかともなく毎日電話した。

 家では口数が少なく頑固な巌さんと、甘え下手の美恵子さんは、若い頃はよくけんかをしたという。一緒に年を重ねるごとに丸くなってきて、今回の経験を通してさらに絆は強まった。自宅に戻った2人は会話が増えたといい、巌さんは「話をすることは大事だと思った。あと何年生きられるか分からないし仲良くやりたい」と話す。美恵子さんは「この年になったら、かばい合っていくしかないね」とほほ笑んで返した。(安田義教)

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