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声を残したい ALS患者の佐藤さん、仲間の支援で「声」を録音

録音に臨む佐藤さん(左)。水口さんを話し相手に一言ずつ言葉を発した

 全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」。今春に診断を受けた帯広市の佐藤仁美さん(41)が、症状の進行で発話が難しくなった後のコミュニケーション法を模索している。筆談や文字盤以外に、録音した自分の声を読み上げる音声ソフトがあるが、症状の個人差や費用面などもあって十勝管内でこのソフトの導入例はまだない。「声を残したい」。佐藤さんの思いに、仲間が応えようと動いている。(安田義教)

 佐藤さんは4月にALSと確定診断された。2年ほど前から歩行時にバランスを崩すことが増え、足に力が入らなくなった。不安に感じて複数の整形外科や脳神経内科を受診しても、結果はどこも「原因は分からない」。

 痛みが激しくなり、入院して全身をくまなく検査した結果、神経伝達の異常が分かり、ALSと伝えられた。「ようやく分かった」との思いと同時に、「私は死んでしまうんだ」と頭が真っ白になったという。

 治療法がまだ確立されていないALSだが、人工呼吸器を着ける延命措置がある。生きたいという思いの一方、家族らへの負担を考えて佐藤さんは心底悩んだが、シングルマザーで育てた子どもたちの意見もあり、今は人工呼吸器の装着を考えるようになった。

 人工呼吸器を着けるには気管を切開するために、声を失う。全身の運動まひが進み、筆談ができなくなると、視線や身体の一部の動きで読み取る装置を使う患者が多い。

 明るく社交的な性格で、勤務したペットショップでは一番の売り手だった佐藤さん。「言葉を失い、他の人とつながりがなくなるのがつらい」と語り、音声ソフトの存在を知ってからは声を残したいと思うようになった。

 9月下旬、ALS協会帯広支会の東洋(あずま・ひろし)さんらが集まり、佐藤さんの声を録音した。「お願いします」「頑張ります」「楽しかった」。紙に書かれたフレーズを見ながら、マイクの前で一言ずつ、ゆっくりと読み上げた。2日間かけて数百語を録音した。

 音声ソフトは、道内では元札幌交響楽団バイオリニストの大平まゆみさんが使うことで知られるが、同支会によると十勝管内の使用例はない。導入には数十万円から100万円の費用が必要で、資金の一部にクラウドファンディング(CF)を考えている。

 若年性脳梗塞の患者や障害者スポーツなどを支援するNPO法人みんなのポラリス(帯広)の水口迅代表は「診断から半年での姿に仁美さんの強さを感じる。かなえてあげられればいい」と行動を共にする。佐藤さんは「ALSは特殊な病気。私が実験台のようになり、後の人たちに何か残せればいい」と話す。

<筋萎縮性側索硬化症(ALS)>
 全身の筋肉がまひ、委縮していく神経筋難病。原因は不明で、一般的に発病から5年弱で呼吸筋がまひして呼吸困難に陥る。患者数は全国で約9000人、管内の患者数は約30人と言われている。

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