フクロウの「まろ」フリーフライトに挑戦中 おびひろ動物園
おびひろ動物園(柚原和敏園長)で飼育されているエゾフクロウの「まろ」(雌、3歳)が、獣舎の外で人の腕から止まり木へ飛び立つ「フリーフライト」に挑戦している。担当飼育展示係の野田紗世さん(25)が、まろとともに今年から本格的なトレーニングを始め、リードを外して飛び立つことに成功。スポットガイドなどで来園者の前での実施を目指し、休園中も練習を重ねている。(石川彩乃)
まろは2018年6月にとかち帯広空港で保護され、同園に来園。小さな頃から人の手で育てられたため、腕に乗ることにも慣れていたという。
練習を始めたのは、もともと動物のトレーニングが好きだった野田さんが「飼育員としてスキルアップを目指したい」と思い立ったのがきっかけ。フリーフライトの経験がある同園の飼育員や書籍などを参考にしながら独学で理解を深めた。
訓練は昨年、獣舎内でグローブをはめた腕にまろを乗せることから始めた。今年に入り、リード付きのまろを腕に乗せ、園内を散歩。外の環境に慣れた7月ごろから、本格的なフリーフライトのトレーニングを開始した。笛の合図で止まり木や柵に飛び移らせ、トングで餌のひよこを見せながら笛を吹く。まろが餌に食いつくために腕に飛び移る。1メートル、3メートル、5メートル…徐々に距離を長くし、練習を繰り返した。
1~2カ月でリードを外すことができたが、フリーフライトには、動物が逃げてしまう「ロスト」の危険も隣り合わせ。野田さんは「リードはもう少し早く外すことができたと思うが、逃げてしまう不安もあった」。エゾフクロウなどの猛禽(もうきん)類は「人に懐くことはなく、慣れるという感覚」と野田さん。「腕の上で餌をもらえる」と覚えさせることが大切だという。
野田さんはフリーフライトの時間のみ餌を与え、休みの日には他の飼育員が、訓練のときと同じように、トングで餌を食べさせている。上空を飛び回る野生の鳥や周囲の音などにも反応し、腕に戻らないときもある。まろの空腹状態に合わせ、餌に反応しなくなったら訓練を中止するなど、細心の注意を払っている。
現在、同園で来園者の前でフリーフライトを実施しているのは、タカ科のモモアカノスリ「エブリー」(雌、7歳)のみ。
「慣れてきたら、来園者の頭の上をまろが飛んで、羽の音や風を感じてもらいたい」と野田さん。冬が近づくと、体力温存のためトレーニングは休止し、来春から始める予定だ。柚原園長は「フリーフライトは飼育員と動物との信頼関係が鍵。比較的リードも早くとれた。来園者の方にも間近で飛び方を見て、理解を深めてもらえたら」と期待している。