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「幸せの心を配ってくれた」 紫竹さん死去 十勝から惜しむ声

シーズン中は毎日、ガーデンの草花の世話に明け暮れた紫竹さん(2011年)

 「紫竹のおばあちゃん」として慕われ、4日に亡くなった紫竹ガーデン(帯広市美栄町)社長の紫竹昭葉(しちく・あきよ、本名・昭代)さん(享年94)。夫の死を機に「野の花が自由に咲く庭園を」と1992年に同ガーデンをオープンさせ、北海道・十勝を代表する観光庭園へと育て上げた。親交のあった関係者からは惜しむ声が上がっている。(石川彩乃、津田恭平、松岡秀宜、本田龍之介、松村智裕、安田義教)

 紫竹さんの長女でガーデンの取締役専務を務める隈本和葉さん(73)は「おばあちゃんはたくさんの人に愛され、本当に幸せだったと思う」と振り返った。

 紫竹さんは4日、朝6時ごろに起床し、入浴を済ませた。その後、花が生い茂る自宅庭で種をまくなど作業をしていたところ、倒れたという。4日は管外から親戚が訪れ、午後からガーデンを訪れる予定だった。

 紫竹さんは生前、「花畑の中で、花に囲まれて死にたい」と話していたという。隈本さんは「本当にその通りになった。安らかに最期を迎えた」と涙ぐんだ。

 同ガーデンは、全国から年間約10万人の観光客が訪れ、北海道ガーデン街道の中核を担っている。

 「たくさんのお客さまに、花を見て喜んでほしい」-。花以上に人が好きだったという紫竹さん。隈本さんは「やりたいことは絶対に諦めずにやり通す。私も母のような人になりたい」と静かに話した。

優しい先駆者 惜しむ声
 JA帯広かわにしの有塚利宣組合長は「苦楽もともに知る長年の友が、また一人旅立ってしまった」と肩を落とす。有塚さんは紫竹ガーデン開園(1992年)前から、さままざまなことに奔走する紫竹さんの苦労を知る一人だ。「当時は観光農業は認められない形。60歳を過ぎてから、農業者として土地を取得したり…ね」と振り返る。

 ガーデンは北海道・十勝を代表する観光庭園に成長。「地道に草花を植え続け、紫竹さんが心血を注ぎ続けたたまもの」と話す。

 「50年来の仲」で思い出は尽きない。紫竹さんの亡きがらとも対面したという。「非常に残念。今はただ、安らかに」と言葉少なに話す。

 元帯広市長の田本憲吾さん(91)は、かつて所属していた帯広青年会議所の関係で、紫竹さんの夫勲さん(故人)と親交があり、50年ほど前に紫竹さんに出会った。「女性が全く違う分野の農業に入って大変な苦労をしたと思うが、自分の思った道を進み、立派に事業を成し遂げた」とたたえた。ガーデンは市の観光振興にも寄与し、「たくさんの人が帯広に来てくれるようになった」と感謝した。

 北海道ガーデン街道協議会の林克彦名誉会長は「ガーデン街道立ち上げ以前からつながりがあり、精神的な支柱だった。誰に対しても優しく平等な方で、ガーデナーとしてだけでなく、高齢の女性がチャレンジする姿に周囲の人が勇気をもらっていた」と悼んだ。

 2008年から大森康雄社長(67)とともに大森ガーデン(広尾町紋別14線)を営む大森敬子専務(67)は「20年ほど前から交流させてもらっているが、昭葉さんは十勝のガーデンの先駆者。おごらず親しみやすい人柄で、見習いたいと思っていた。ガーデンは訪れた人が幸せを感じ、それを持ち帰って広げる場だと考えているが、昭葉さん自身がそんな存在だった。優しい幸せの心を配ってくれていた」と話した。

 紫竹ガーデンは花を生かした地域観光への貢献が評価され、05年に日本観光協会の花の観光地づくり大賞を受賞。紫竹さんは18年に北海道150年特別功労賞を受けた。

 ガーデンの設計を担当した園芸文化協会常務の奥峰子さん(東京)は、企業単位ではなく6ヘクタールもの庭を整備して公開し、オープンガーデンとしては国内でも先駆け的な存在だったと評価する。「好きな花を自然な形で手入れして、そこにいるだけで気持ちよい『おばあちゃんの庭』を造った。何度も行って会いたくなるのは紫竹さんならでは」と話し、国内外にファンを持つ魅力を語った。

 紫竹さんは、上皇陛下の誕生時(1933年12月23日早朝)に全国で午前7時からサイレンを鳴らして祝った際に歌われた奉祝曲を覚えていて、令和への改元を迎える2019年1月に当時の歌を歌った=動画あり。

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