MTB山本幸平、東京五輪への調整に自信 W杯は「ワイルドな走りを」
自転車マウンテンバイクで東京五輪日本代表に内定している幕別町出身の山本幸平選手(34)=ドリームシーカーレーシングチーム-国際自然環境アウトドア専門学校、帯農高出=は、新型コロナウイルスの国際的な感染拡大の影響で来夏に延期となった4度目の大舞台へ、ベテランらしい泰然自若の心と、世界を目指して突っ走っていた若手の頃の勢いのある走りで8位入賞を目指す。29日に十勝毎日新聞社を訪れて、心境を語った。「早い段階で内定をもらえて精神的にすごく楽。一度調子を落とし、1年以上の期間をかけてまた高めていけばいい」とリラックスした表情で話した。今秋に再開予定のワールドカップ(W杯)は今季のスローガンの“ワイルド”さを押し出す。「昔はトップを目指してハングリーだったが、野性的な感覚がなくなっていた。がむしゃらな走りで先頭集団に食らいつきたい」と意気込んだ。
山本はマウンテンバイクで、アジアで他の追随を許さない第一人者。全日本選手権は11度、アジア選手権を10度制している。五輪も2008年の北京を皮切りに、ロンドン、リオデジャネイロと3大会連続で出場。北京46位、ロンドン27位、リオ21位と回を重ねるごとに順位を上げている。
「現役生活の集大成」と大会後の引退を明言していた自国開催の東京五輪は、本来なら来月27日に静岡県伊豆市で開かれる予定だった。コロナ禍で1年の延期が決定したが、日本代表の選考基準は来年に持ち越さず、今年5月28日付の国際自転車競技連合のランキングで日本最上位の山本が権利を得て、4大会連続の五輪出場切符を手にした。
延期決定直後こそ「頭が真っ白になった」が、すぐに気持ちを切り替えた。「これまでは本番の約2カ月前に出場が決まり、ばたばたした状態で五輪を迎えていた。今回は調整期間が長いのでありがたい」と話す。
家族との時間も
練習は長野県松本市の自宅近くの山で普段通り自転車を1人で乗り込んでおり、「影響は(トレーニング)ジムが閉まってウエートトレーニングができなかったことぐらい」。むしろ世界を飛び回っている例年と違い、国内で妻、長女と長く共に過ごせる時間を前向きに捉えている。
2月下旬から中断しているW杯は9月から再開し、米国では行わずに欧州に集中して開催する方向だ。山本は同月20日のフランス、10月1日と4日のチェコでのW杯に出場し、11日のオーストリアでの世界選手権に挑む青写真を描く。
制限をかけずに
五輪出場のためには、国際自転車競技連合の世界ランキングが重要になる。レースでポイントを取るために、最低限の安全な走りになってしまう。ただ、早々と内定が出たことで、東京五輪8位入賞の目標を果たすための走りを試せる。「先頭集団に食らいつかないといけない。最初は5分、10分だけでもいい。後のことを考えずにスタートから変に制限をかけずに走りたい。東京五輪に向けてプラスになる」と張り切る。
3日間で450キロ
今月20日にふるさとの十勝に戻り英気を養いつつも、毎日幕別町内のトレーニング施設で汗を流すほか、持ち込んだロードバイクで3日間で450キロを走った。雨の中でもペダルを踏み込む。「十勝晴れを期待していたけど寒い」と苦笑いも。新型コロナウイルスの世界的な収束が見えづらい中、来年の東京五輪の開催にも影を落とす。それでも「応援してくれる人がたくさんいる。アスリートとして諦める理由は何一つない」。優しげな目に力強い光が宿った。(北雅貴)