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【震災9年】十勝の被災地支援も10年目へ 先行き不透明な社会情勢でも支援の灯火絶やさず

十勝の豊かな自然の中で思い切り遊ぶ被災地の子どもたち(写真はむすびば十勝提供)

 東日本大震災から9年。新型コロナウイルスの感染拡大で先行きが見えない中、「3月11日」を迎えた。全国各地で予定されていた追悼式は軒並み中止となり、社会全体で復興への思いを強くするはずの日に水を差された。それでも被災地を支援しようというともしびを絶やさずに持ち続けている人たちはいる。ここ十勝にも-。

 「夏休みに十勝でボランティアをやりたい。だから高校に行くんだ」

 栃木県宇都宮市に住む葉山勇人さん(16)=仮名。9年前の「あの日」に福島県で被災し、家族で宇都宮に移り住んだ。しかし、震災で気持ちが落ち込んだ葉山さんは学校に通えなくなり、自宅に引きこもって毎日を過ごすようになった。

 変わるきっかけをくれたのは、十勝の支援団体「どんぐりとやまねこ」(中村典代代表)の保養活動だ。2017年の夏休み、帯広で行われた自然体験活動に初めて参加したときは「おとなしくて口もきけないような男の子だった」(中村代表)。

 ところが、17、18年と続けて十勝を訪れ、自然の中で思い切り笑って過ごすことを覚えると、葉山さんは「高校生になって十勝に行きたいから、きちんと受験する」と不登校を脱却。晴れて高校1年生になって19年の活動にも参加したという。

十勝で保養活動を体験した子どもから届いたお礼の手紙。「また来たい」と再訪を願う子が多い(写真はむすびば十勝提供)

 中村代表と夫修一さんは、11年の夏から福島の子どもたちを受け入れる活動を続け、16年に「どんぐりとやまねこ」を発足して活動基盤を固めた。この4年間で累計60人の子どもたちが活動に参加し、葉山さんのように笑顔を取り戻している。

 ただ、今年10年目を迎える活動は、たとえ新型コロナの影響が終息したとしても、風化のリスクがあるという。「行政や企業の補助金が終了してしまうケースもある。もっと支援の輪が広がってくれれば」と修一さんは言葉を絞り出す。

 長い年月が活動に影響を与えているのは、他の団体も同じだ。どんぐりとやまねこと同様、11年から被災した子どもたちを対象にした保養活動を実施している被災者支援ネットワーク「むすびば十勝」(高橋哲二代表)は、10人いる世話人会のメンバーが高齢化。累計100人の子どもたちを楽しませてきた活動だが、10回目を節目に“終結”も検討しているという。

 だが「被災地の福島は依然として放射線量が高い。幼い子を抱えるお母さんたちは今も、心配でわが子を外で遊ばせることができない状況が続いている。たとえ個人になったとしても支援活動は続けたい」(柴田芳美事務局長)という思いもある。

 どんぐりとやまねこ、むすびば十勝の関係者に共通するのは「資金や人手さえあれば、11年目も、12年目も…」という心情。9年前に被災した子どもたちの中には、社会人や大学生になって「また十勝に行きたい」と話し、ボランティアとして再び来勝してくれる人もいる。

 被災地支援の中で生まれたつながりや、助け合いの心をどう持続させるのか。9年の歳月は、十勝の住民にも課題を突き付けている。(奥野秀康)

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