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「幻のコケ」絶滅危惧種のナンジャモンジャゴケ 十勝で初めて生息確認

トムラウシ山西斜面の岩場に生育していたナンジャモンジャゴケ

 環境省で絶滅危惧種に指定されている「ナンジャモンジャゴケ」の生息が、道内で約50年ぶりに確認された。生育区域は新得町を含む大雪山系トムラウシ山で、十勝で公式に確認されたのは初めて。道内では1971年に最初に発見されて以降は絶滅したと考えられ、「幻のコケ」とも呼ばれる。生態は十分には解明されておらず、コケの植生分布などを解明する手掛かりになりそうだ。

 国立極地研究所(東京)の神田啓史名誉教授と、ひがし大雪自然館(上士幌町)の学芸員乙幡康之さんの研究チームが2017年7月、トムラウシ山の山頂付近など10カ所で確認。研究内容を今月発行のコケの学会誌「蘚苔類研究」に掲載した。

ナンジャモンジャゴケの標本を手に発見当時の様子を振り返る乙幡さん

 2人はコケの専門家で、調査のきっかけは、神田名誉教授が1969年にトムラウシ山で採集したコケの標本が一昨年にナンジャモンジャゴケと分かったこと。以前、本州での調査経験があった乙幡さんが生息場所を突き止めた。

 コケは一般に、雄と雌による受精でできた胞子体で胞子を作り、それが発芽することで繁殖する。しかし、ナンジャモンジャゴケは雄が発見されておらず繁殖の過程が謎に包まれている。

 現時点では何らかの影響で雄が絶滅し、雌がしぶとく生き残っている説が有力だ。ちぎれたコケの断片が再生して局所的に増えることもあるが、多くは環境変化に耐えられず、広く分布するには至らない。乙幡さんは「胞子も飛ばせないのに、高山帯という過酷な環境に点在し生き続けているのは不思議」と驚く。

 ナンジャモンジャゴケは染色体が最も少ない植物としても知られる。乙幡さんは「形状やDNAなど多方面で原始的な特徴を持っており、植物の起源や進化をたどるのに重要な標本。大雪山の自然環境の豊かさを認識したのと同時に、今回の発見を足掛かりに調査を進めたい」と話す。(安倍諒)

<ナンジャモンジャゴケ>
 1951年に名古屋大の研究者が長野県で初めて発見。胞子体がなく、どのコケ類に分類されるかが不明なため、こう名付けられた。その後、北米や東アジアなど海外でも発見され、国内では北海道のほか、富山県や岐阜県、栃木県に分布。主に標高の高い岩場や急斜面に生育している。

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