パワーリフティング小笹、亡妻にささげる日本新準V
パワーリフティングの第21回ジャパンクラシックマスターズ選手権(9月17、18日・秋田県男鹿市、日本パワーリフティング協会など主催)男子83キロ級M3(60代)の部で、芽室町の小笹春善(65)=十勝パワーリフティング協会=が準優勝を飾り、来年6月にベラルーシで開かれる世界選手権への出場を決めた。大会ではスクワットで212・5キロの日本新記録を樹立したほか、ベンチプレス55キロ、デッドリフト210キロのトータル477・5キロを挙げた。小笹は今年2月に妻の美和子さんを亡くしており、「生きているうちに喜ばせることはできなかったが、妻の応援が力になった」と感謝の気持ちをささげた。(内形勝也、塩原真)
亡き妻への思い胸に
同部には、小笹と谷川達朗(富山)の2人が出場。谷川はスクワット200キロ、ベンチプレス135キロ、デッドリフト190キロのトータル525キロを挙げて優勝。小笹はトータルで47・5キロ及ばなかったが、スクワットは谷川を12・5キロ上回った。
けがから再起
小笹は21歳でパワーリフティングを始め、これまでに世界選手権に3回の出場を果たしている。8年前に左肩の肩甲下筋(けんこうかきん)を損傷し、腕が思うように上がらなくなり、6年前に医師の勧めで手術に踏み切ってからは「100%の力を出せない」との理由から大会出場を見合わせてきた。
トレーニングは欠かさずに続けていたが、美和子さんが昨年の暮れに乳がんを発症した。小笹は「病気の妻を励ますつもりで大会出場を決めた」と一念発起。大会で日本一になることを約束し、トレーニングのペースを上げたが、それからほどなくして美和子さんは63歳で息を引き取った。
小笹は亡き妻との約束を果たすため、黙々とトレーニングに励んだが、手術した左肩の調子は思わしくないまま大会当日を迎えた。肩にバーベルを担いだ状態で、腕を上げずに屈伸から立ち上がるスクワットに懸け、見事に日本新記録を樹立してみせた。
「来年は集大成」
小笹は「トータルは恥ずかしい記録に終わったけど、スクワットで約束通り日本一になったことを妻の仏前に報告した」と笑顔を見せた。「来年の世界大会は集大成のつもりで臨む。妻にいい報告ができるように頑張りたい」と4度目の世界世界選手権に向けて闘志をみなぎらせている。