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「暮しの手帖」 半世紀前に陸別の寒さ特集

陸別特集が掲載された「暮しの手帖」と編集スタッフの案内役を務めた斎藤さん

 【陸別】NHKの朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモデルとなった生活雑誌「暮しの手帖」の創刊者と編集長が50年前に取材のため来町し、同誌に「零下三十度の町」と題した特集記事を掲載している。記事と写真は極寒生活の厳しい現実を伝えるもので、一部住民からは批判の声が上がったが、当時、町役場職員の広報担当として案内役を務めた斎藤省三さん(82)は「町民が寒さを前向きに捉えようとする契機となった記事」と、毎朝テレビ小説を見ながら感慨深げだ。

 特集記事は1966年2月号に掲載。「日本紀行」と題した連載の巻頭特集の7回目で、15ページにわたり陸別の生活を写真を交えて紹介している。記事は「町を歩いていると、空気が、まるで無数のガラスの破片のように、顔に突きささってくる」「陸別の町のひとは、いってみれば一年の半分ちかくを、フリーザーのなかで暮しているようなものである」(いずれも原文のまま)など厳しい寒さを表現した字句が並ぶ。

 記事に合わせて、凍結した水道管(不凍栓)に熱湯をかける住民、玄関先の凍った牛乳、ビニールを張った一重窓の板壁造りとつららなどの写真を紹介。「夢がない」という若者の言葉を引用し、「一人ずつの力では、これ以上もうどうしようもならないのである」と結んでいる。

 取材で来町したのは「とと姉ちゃん」の主人公小橋常子のモデルとなった「暮しの手帖」の編集・発行者大橋鎭子さん、花山伊佐治編集長のモデル花森安治編集長、陸別出身の編集者尾崎弘枝さんら5人。同年1月10日から5日間滞在した。

 花森さんの印象について斎藤さんは「地域の暮らしについて自分が見聞きしたことだけを書くという、まさに『暮しの手帖』の編集方針を地で行くような人」、大橋さんは「表に立たず目立たない人だったが、スタッフをしっかりリードしていた」と振り返る。花森さんは取材の合間に地元の青年と懇談。「寒さを利用したいい産業があるはずだ」と熱心に語り掛け、若者に奮起を促したという。

 斎藤さんは、その後の町広報紙に記事の読後感をコラムにして掲載。「ひとつの記事が、私たちの生活を見つめ、町の未来像を築き上げる機会になっていただきたい」と書いた。

 記事に触発されるように、町商工会青年部が冬のイベントづくりを模索。斎藤さんは「記事で夢がないと指摘された若者が、寒さを逆手に取ったしばれフェスティバルを生み出した」と記事の意義を振り返っている。(鈴木裕之)

暮しの手帖社 
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/

関連写真

  • 陸別特集の巻頭ページ

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  • 「暮しの手帖」 半世紀前に陸別の寒さ特集  3

    「暮しの手帖」 半世紀前に陸別の寒さ特集  3

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