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戦争体験を若い世代に 久保田さんの手記が冊子に

「戦争を知らない若い人に読んでほしい」と話す久保田さん(左)と野坂さん

 太平洋戦争で青少年義勇軍として満州(当時)に渡った久保田信鈴さん(88)=帯広市在住=が、戦争末期の苦難の逃避行と抑留生活をつづった手記が冊子にまとめられた。現在の社会情勢に危機感を感じ、体験を文字にした久保田さんは「戦争を知らない若い人にぜひ読んでほしい」と願っている。

 俳句や短歌を詠む久保田さんは、手記を2013~14年に俳誌「樺の芽」に掲載。西帯広でミニコミ誌を発行する野坂勲さん(65)がそれを目にし、全61ページの冊子「捨てられた民」としてまとめた。

 長野県生まれの久保田さんは、16歳で満州開拓青少年義勇軍として中国に渡ったが、1945年8月9日のソ連軍侵攻により開拓民と共に逃避行し、抑留されて収容所に送られた。

 当時の満州では男性が招集され、残された老人や女性、子どもたちが関東軍に置き去りにされた。手記では現地人の情けにすがって置いていかれる子どもや、関東軍が破壊した橋のそばで子をあやめて泣き叫けぶ母親の姿など、「生き地獄のよう」(久保田さん)な悲惨な状況が生々しくつづられている。

 久保田さんが「今のうちに書かなければ」と手記を記した理由は、今の社会情勢への危機感から。「学校では先生も政治のことはしゃべれなくなっているという。昔は下手なことを言うとみんな捕まった。戦争が始まった昔と同じになりつつある」。軍国少年として育ち、義勇軍の道を選んだ自身の経験から「今は18歳から選挙をする。若い人は自分の道をしっかり見てほしい」と願っている。

 野坂さんは「戦争では女性や子どもが常に犠牲になるというのは、本当だったのだと感じる。語り部が少なくなる中、記録を残して地域で知ってもらいたい」と話している。

 冊子には、満州で集団自決が行われた麻山事件を生き延びた佐藤幸子さん(音更)の記録も収録した。300部を印刷。希望者には300円程度の寄付を求めている。問い合わせは野坂さんへ。(小林祐己)

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