老健の給食にご当地グルメ 外食気分に高齢者にっこり
【音更】町緑陽台南区の介護老人保健施設「とかち」は、道内のご当地グルメをアレンジしたオリジナル給食を提供している。外に出る機会が少ない利用者に、月1回の名物料理が元気の源になってくれればと今年度から始めた。同グルメを通じ、利用者は外食気分だけでなく旅行気分も味わっている。
きっかけは2014年度の利用者アンケートで変化を求める声が寄せられたこと。「単調になりがちな施設での生活が、快適で、より良い暮らしなれば」(管理栄養士の澤田環さん)と事務長、澤田さんと調理を委託している業者の調理師、栄養士、エリアマネジャー5人で構成する「給食会議」で検討。施設に居ながらにして、道内各地の雰囲気を楽しめるご当地グルメに着目した。
施設の給食は安全性はもちろん、高齢者が好む味付け、大量に調理できるメニューを考えなければならない。「いつもとはひと味違った物を出さなければならないが、奇抜過ぎてもダメ」と澤田さん。「旗を立てる」「鉄板に載せる」を除外するなど、各グルメの公式ルールに近づけた形で再現している。おかゆのみの利用者にはおかずとして、小さい物しか食べられない利用者には切り分けて提供するなど、要介護者でも安全においしく食べられるよう工夫している。
初回(5月11日)の「エスカロップ(根室市)」から月1回、入所者やデイサービス利用者約130人分を提供。「大樹チーズサーモン丼」など十勝のメニューも出している。提供前にはポスターなどを制作し、利用者の外食気分を盛り上げている。普段と異なるメニューに多くの利用者が感激。自然と自身の来訪経験を語り合うなど「お年寄り同士の会話のきっかけにもなっている」という。
6回目(10月6日)のメニューは秋サケの空揚げを白飯に載せた「オホーツク網走ザンギ丼」。毎回、楽しみにしている80代女性は「網走に足を運んだ気分。(ご当地グルメは)土地土地の味が楽しめてうれしい」と笑顔を輝かせた。
今後は「道内に限らず、全国や世界のグルメに発展させたい」と同施設支援相談員主任の山形弘一さん。難しいことが多い中でも、利用者の声に耳を傾けながらチャレンジしていくつもりだ。
(関根弘貴)
◆介護老人保健施設「とかち」が提供してきたご当地グルメ風メニュー
5月11日 エスカロップ(根室市)
6月9日 オホーツク北見塩焼きそば(北見市)
7月8日 十勝芽室コーン炒飯(芽室町)
8月3日 大樹チーズサーモン丼(大樹町)
9月10日 富良野オムカレー(富良野市)
10月6日 オホーツク網走ザンギ丼(網走市)