「雄姿忘れない」両親、友人らねぎらい長島選手引退
「よく頑張った」「もっと雄姿を見たかった」。スピードスケート男子500メートルで銀メダルを獲得したバンクーバーなど、3度の五輪に出場した長島圭一郎選手(32)の現役引退を受け、十勝の関係者からはねぎらいと惜しむ声が上がった。十勝に大きな足跡を残した天才スケーターは、いつまでも人々の心にさんぜんと輝く。(岡部彰広、井上朋一、菊池宗矩)
◆父「予想はしていた」母「刺し身を食べさせたい」
長島選手の父勝二さん(67)=池田町在住=は引退の知らせに「予想はしていた」と明かした。
長島は4月初めに実家を訪れ、10日に十勝川温泉で家族とともに一泊した。去就についてはっきりとは話さなかったが「世界で勝てないという話をしていたので、今季でやめるのかなと。吹っ切れていたのかやり切った思いでいたのか、明るい感じだった」と勝二さんは振り返る。
また勝二さんは、長島が昨季のワールドカップで最高9位に終わったことについて「自分が入院したことで動揺を与えてしまったのでは」と気遣った。勝二さんは昨年8月に体調を崩し今年1月末に退院。長島は帯広で合宿中に見舞いに来るなど心配していたと言う。
バンクーバー五輪では一家で現地に応援に駆けつけ、銀メダル獲得を見届けた。「やめるとなるとやはり寂しい。(息子は)気持ちを整理し、スケートをしていた期間より長い今後の人生をしっかり進んでほしい」と勝二さん。母・正子さん(63)は「疲れた顔を見るのがつらかったのでほっとしている。現役時代は出せなかった魚の刺し身など好きな物を食べさせてあげたい」と話した。
◆地元池田町「感動与えてくれた」
「長島選手引退」のニュースに地元・池田町の関係者からは驚きとともに同選手をねぎらい、今後の活躍を期待する声が上がった。
十勝毎日新聞電子版の速報で知ったという勝井勝丸町長は「昨年5月の現役続行表明で今後の活躍を期待していた」としつつ、「これまで良くやった。子供たちに夢がかなうことを実践で教えてくれ、町民に感動を与えてくれた。ありがとうと言いたい」と感謝。田中功教育長も「続けてほしかったが残念。チャンスがあれば、池田でも子供たちにスケートを教えてもらえれば」と話した。
町スケート協会の永田達也会長も「大会で長島選手の滑りをまだ見たかった。ただ、本人が決めたこと。後進の指導に当たりながらゆくゆくはチームのコーチになってもらえれば」と期待した。
◆高校同期の友人「お疲れさま」
長島選手と池田高スケート部の同期で主将だった川岸祐貴さん(帯広市、農業)は「相当なプレッシャーの中で戦っていたはず」とねぎらう。引退の報道を受け無料通話アプリLINE(ライン)で「お疲れさま。帰ってきたら朝まで飲みに付き合え」と送ると「帰ったら連絡する」と返事があったという。高校時代は常に明るく、周りからも慕われた。高校2、3年のころ「夜一緒に町内をランニングしたことが思い出」という。
同じく同期の川端文平さん(山梨県、会社員)は「(長島選手は)十分日本を引っ張ってきた。世界の舞台を身近に感じさせる存在だった。ありがとう、お疲れさまといいたい」と話す。17日夜に長島選手からら電話が来た。長島選手は「これからはサラリーマンだ」と笑っていたという。
「ストイック」「繊細」とマスコミから評されたこともあったが、川端さんは「誰もやらない(きつい)ことを普通にやっている」ことが強さの秘密だと思っている。競技に取り組む姿勢は高校時代からこれまで「変わっていない」とし、その経験が後進の指導に生かされることを願っている。