北野武監督作に出演 小野寺昭さん、安田顕さんに聞く
２５日公開の映画「龍三と七人の子分」に出演する小野寺さん（左）と安田さん
北野武監督の最新作「龍三と七人の子分」が２５日、シネマ太陽帯広（帯広市西３南１０）など全国で公開される。藤竜也さん演じる「元ヤクザ」の老人・龍三と個性豊かな７人の子分、それと安田顕さんがボスを務め強引な取り立てや悪徳商法などで裏社会にのさばる「京浜連合」との“抗争”を描いたコメディー作品。ベテラン俳優陣の競演と、北野監督ならではの風刺やユーモアが散りばめられた話題作だ。出演する帯広出身の俳優小野寺昭さんと、安田さん（室蘭市生まれ）の「道産子」２人に、映画の見どころや北海道・十勝への思いを聞いた。
（文・原山知寿子、撮影・塩原真）
－映画は北野監督自らも出演し、近藤正臣さん、中尾彬さんなど“濃い・豪華すぎる”キャスト陣です。撮影現場の雰囲気は？。役作りも苦労したのでは。
小野寺 怒号が飛び交うピリピリした現場を想像していましたが、全くそんなことはなかったです。演じている人たちが極めて真剣に、まっとうに演じ、丁寧に進んでいく感じでした。全員が役に徹してきちんとした演技をして、だからこそ笑いにつながっている－。そんな現場でした。
安田 ご一緒できるのが、光栄な方々との共演でした。難しくない役などありませんが、犯罪者・反社会的な存在の役柄なので難しかったです。現場を楽しむという余裕はなく、いい意味で緊張感がありましたね。（ここで、「虚勢も交えた初々しい『ボス』らしさがよく出ていた」と、小野寺さんがコメント）
－巨匠・北野監督の印象はいかがでしたか。
小野寺 尊敬する北野さんの作品に出演でき、非常にうれしかった。テレビでの様子と違い、非常に物静かな人でした。シャイな人なんでしょうね。現場であれこれ指示や注文を出さず、テントで黙々と映像のモニターを眺めて見守り、自由にさせてくれました。台本、キャスティングの時点で、一定の作品が完成していると感じました。
安田 本番前の台本読み合わせのときから、めちゃめちゃ楽しかったですね。通常の本読みは展開や筋書きの確認程度なのですが、皆さん本気で読むので、笑いが絶えなかったです。北野監督は作品内でも重要な役柄で、その存在感に圧倒されました。
－子分が入院先から駆け付けたり、「振り込め詐欺」など、高齢化や社会問題に触れる作品ですね。
小野寺 確かにテーマとして提示していますが、深刻にせずに「笑い」として包み込み、メッセージ化しているのが、さすがと思える北野作品。エンターテインメントであり、家族などへの大事なメッセージが添えられつつ「品」がある。ほんわかとした作品で、見るとホッとすると思います。
安田 「老い」「死」など社会的側面や時代を感じさせますが、根底にユーモア、滑稽さがあるので悲壮感がない。ぜひ劇場に足を運び、大笑いしてください。
－いよいよ公開が間近です。最後に古里・北海道の人にメッセージを。
安田 北海道出身の俳優を代表する先輩の小野寺さん、品川徹さん（旭川出身）と共演できて本当にうれしかったです。北海道の人にまず見て、楽しんでもらいたいです。
小野寺 年男の記念すべき２０１５年に北野監督の作品に出演できたことは誇りであり光栄。こんなにうれしいことはない。特攻志願兵と思い込んでいるとても変わった役柄ですが、十勝・北海道の人に観て喜んでもらいたいです。
龍三と七人の子分たち 「鬼の龍三」の異名を取った元ヤクザの龍三だが、最近は家族からも疎まれ、肩身の狭い余生を送る。ある日、振り込め詐欺まがいの電話を受け、かつての“縄張り”でやりたい放題の京浜連合の存在を知る。かつての子分を招集し、打倒京浜連合に立ち上がるが…。
おのでら・あきら １９４３年帯広市出身。６９年に俳優デビューし７２年放送開始のテレビドラマ「太陽にほえろ！」の「殿下」役で人気を博す。連続ドラマや映画の出演の他、ナレーターとしても活躍。
やすだ・けん １９７３年室蘭市生まれ。大学時代に結成した演劇ユニット「ＴＥＡＭ ＮＡＣＳ」で活躍し、テレビや映画出演などで活動の幅を広げている。
