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「彼女の夢忘れない」、亡き生徒へ卒業証書 道芸術高

自身が撮影した小森さんの写真をそばにに置き、卒業証書を書いた安藤さん

 【清水】4月から町熊牛の本校が後志管内仁木町に移転する「北海道芸術高校」(佐藤徳崇校長、生徒1183人)。今月末で退任する教頭の安藤國廣さん(70)が最後の仕事として、今年度の卒業生約350人の卒業証書を書いている。その中に、安藤さんがどうしても忘れることのできない1人の女子生徒がいる。声優コースに通い、一昨年、病気で急死した小森咲那(さな)さん。安藤さんは「しっかりとした目標を持ち、笑顔がキラキラしていた。本当に惜しい」と証書の1枚に小森さんの名前を加えた。

元気だった頃の小森さん。自身が最前列の中央に写ったポスターの前で、安藤さんが撮影した(2012年秋)

 小森さんは砂川市出身で、広域通信制の同校の札幌サテライトキャンパス・声優コースに2012年に入学した。本校でのスクーリング(面接指導)の授業で書道を指導していた安藤さんに、「ここはどう書いたらいいですか」と尋ねてきたのが最初の出会いだった。その後、廊下で会った際に「私、絶対に女優になります」と目を輝かせる小森さんに、安藤さんも「実現したら、十勝に後援会をつくって応援するよ」と応え、小森さんと、小森さん自身が最前列の中央に写っている同校のPRポスターを撮影した。

 その小森さんが急死したのは13年3月1日。夕方、自宅ソファの横に倒れている小森さんを帰宅した妹が発見した。救急車で病院に運ばれ、人工心臓に切り替えるなどの救命処置もかなわず、約2時間後に亡くなった。発見時はテーブルの上に美容や自分磨きに関する本が置かれ、シャワーを浴びた跡もあっという。

 もともと心臓が弱く、入学時の健康診断書には「無理はしないように」とあった。小森さんも「明日死ぬかもしれないのだから、きょうを悔いの無いように生きる」と言って、前向きに学校生活を送っていたという。担任だった植田祐矢教諭は「人柄が良く、周りから好かれて友人も多かった。お別れ会には大手の音楽事務所から花が届くなど、将来が有望視されていた」と振り返る。

 安藤さんは「卒業時までは」と小森さんの写真を職員室に飾っていた。同級生もスクーリングで本校に来ると必ず写真の前で手を合わせ、「一緒に卒業しようね」と声を掛けていた。

 5日に札幌キャンパスの卒業式が行われ、小森さんが在籍した声優コースの同級生23人も巣立った。06年の開校以来、毎年、卒業生一人ひとりの名前を卒業証書に書いてきた安藤さんにとっても、退任を控え、今年が最後。その1枚に小森さんの名前も加えた。後日、小森さんの実家に届けられる。明るくほほ笑む小森さんの写真に、安藤さんは優しい目を向けた。(大野篤志)

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