群馬でつなぐアイヌ文化 保育士25人来帯 広尾さんが指導
アイヌ文化を積極的に保育に取り入れている群馬県内の保育士25人が16、17の両日、アイヌ古式舞踊の師と仰ぐ帯広在住の広尾正さん(66)の元を訪れ、踊りや歌の指導を受けた。17日には市内の高齢者福祉施設で初めて公演も行い、お年寄りたちは“逆輸入”されたアイヌ文化を楽しんだ。
来帯したのは同県内の保育士有志でつくる群馬保育問題研究会(大野ゆう子会長)のメンバー。アイヌ古謡を題材にしたミュージカル「オキクルミと悪魔」の作詞・作曲者がともに同県出身者である縁で、同県内では20近い保育園が20年以上前からアイヌの歌や踊り、遊びなどを子供たちに伝えている。
各保育園では子供たちに教えるために、保育士がアイヌ文化を積極的に学ぶのが伝統になっており、20~30代中心の来帯メンバーの中には、いわば“アイヌ文化2世”も。メンバーの一人國井穣さん(28)は「マタンプシ(鉢巻)を自分で作ったり、外でたき火を囲んで魚を焼いたり、卒園発表に向けて歌や踊りを練習したりと、遊びの中でアイヌ文化に触れてきた」と自身の子供時代を振り返る。
同県でのアイヌ文化定着の立役者の一人が広尾さん。東京に住んでいた20年以上前から関東を中心に小学校や幼稚園、保育所などで古式舞踊を伝えてきた。2年前までは広尾さんが同県へ足を運び、各保育園などを回って保育士や子供たちに指導してきた。体力的な問題もあり、昨年からは同会のメンバーが来帯して指導を仰いでいる。
メンバーは2日間にわたって広尾さんから指導を受け、「普段は子供が楽しめるように歌や踊りを伝えているが、広尾さんから本質の大切さを改めて学んだ」(國井さん)と、アイヌ文化の奥深さを再確認。17日午後には太陽園(大正町)など2施設で練習の成果を披露し、お年寄りから「素晴らしかった」「いい思い出になった」と好評を博した。
大野会長は「群馬の子供たちにとってアイヌは憧れの的。来年以降も広尾さんに会いに来て多くを学びたい」と話す。広尾さんは「道内ではあまり注目されないアイヌ文化を群馬の子供たちに伝えてくれて、子供たちもそれを喜んでくれてありがたい。アイヌ文化を残していくためには、アイヌでない人に伝えていくことが大事だと思っている。皆さんが慕ってくれて、自分の声が出る限り伝え続けたい」と、まな弟子たちとの交流が続くことを願う。(丹羽恭太)