恋人の聖地 新たな門出 幸福駅舎囲んでテープカット
幸福駅を囲んでテープカット、再出発を祝ったセレモニー（１６日午後０時５０分ごろ、塩原真撮影）
駅舎の建て替え工事を終えた帯広市の観光名所「旧国鉄広尾線幸福駅」（幸福町東１線）で１６日午前１１時から、完成記念セレモニーが開かれた。多くの市民や観光客が同駅を訪れ、“恋人たちの聖地”の新たな出発を祝った。
セレモニーでは駅舎周辺を囲む約３０メートルのテープカットと同時に、市内の小学生たちが、旧駅舎の築年数に合わせ「愛国から幸福行き」切符をつけた風船５７個を晴天の空に放った。
旧駅舎の壁に所狭しと張られた名刺や写真は新駅舎でも張り付け可能となり、米沢則寿帯広市長が自らの名刺で“張り初め”。米沢市長は「今よりも（さらに）愛される駅にしたい」と述べた。
恋人や夫婦が愛を誓う「ハッピーセレモニー」は駅舎西側に新たに整備した「幸せのひろば」で開催。帯広市幸福町の飯田京介さん（２８）と真衣さん（２７）夫妻、駅の再整備事業に携わった鹿島建設社員で富良野市の力石将光さん（２６）と慧未さん（２７）夫妻が幸福の鐘を鳴らした。幸福駅と共に晴れの日を迎え、多くの来場者の祝福に幸せな笑顔を浮かべていた。
帯広市の阿曽博信さん（７１）は妻の礼子さん（６８）と駅を訪れた。博信さんは「昭和４０年代に広尾線に乗って広尾駅に行った。昔の駅舎のままのようだ」と懐かしそうに語った。
老朽化に伴い、旧駅舎は９月に解体。「古くて新しい」をテーマに、旧駅舎外壁の半分を新駅舎に使用するなど昔の面影を残すとともに、駅舎内には４Ｋテレビの電子看板を設置し、先端技術との融合を図った。（深津慶太）
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約２カ月の工事を終えて生まれ変わった「旧幸福駅」が一般公開された１６日、駅には多くの市民や観光客が詰め掛けた。次の世代に引き継ぐ地域の財産ができた地元住民、駅を一躍有名にした歌「愛の国から幸福へ」で知られる芹洋子さんの歌声に耳を傾ける人、そして「恋人の聖地」で愛を誓い合うカップル－。新たな門出を迎えた幸福駅は早速、訪れた人々に幸せな時間をプレゼントした。
歌手の芹洋子さんは、駅舎西側の特設ステージでコンサートを行い、帯広緑丘小と同稲田小の児童約３０人と一緒に「愛の国から幸福へ」を歌った。芹さんと児童たちは左右にリズムを取りながら歌い上げ、観客も歌詞を口ずさんだ。
稲田小６年の田代啓君（１２）は「芹さんと一緒に歌ったのは本番だけだったけれど、きれいな声が出せてすごいと思った」と共演を喜んだ。
芹さんは「四季の歌」や「いい日旅立ち」なども披露。集まった観客に「きょうは私にとっても新たな旅立ち。全国の皆さんに幸福駅の素晴らしさを伝えたい」と語った。
芹さんの長年のファンという、市内の南部陽子さん（６５）は四季の歌や「おもいでのアルバム」がお気に入り。「小柄ながらも歌声は力強かった。親しみやすい人柄も感じられた」と感激した様子だった。
恋人たちが愛を誓う「ハッピーセレモニー」で祝福された、地元幸福町出身の農業飯田京介さん（２８）と旭川市出身の真衣さん（２７）は式を終えた後、「知人以外にも多くの方に祝福を受けてうれしかった。幸福に生きていきたい」と笑顔を浮かべた。
幸福町の開拓記念誌には、京介さんの曾祖父の故重蔵さんが１９５０年～５６年に、幸福乗降場（幸福駅の前身）で、切符販売を委託されていたという記録がある。京介さんは「（地域や家族との）つながりを感じた一日だった」と感慨深げに語った。
２人の式を見守った幸福町内会長の水口義博さん（５４）は「地元の農業後継者の結婚、幸福駅の再出発と地元にとっては喜びが２倍」と目を細めた。
とかち帯広空港から近い幸福駅は、帯広市の大切な観光資源の一つ。水口さんは「駅がブームになった１９７０年代から時代は変わった。恋人たちに加え、疲れた人々の心を癒やすようなオアシスになってほしい」と話していた。
（深津慶太）
