農に向き合う~農業経営部会会員紹介「芽室・鈴鹿農園」
1.耕作面積207ha、コントラ事業も
鈴鹿誠社長(54)が実家に就農した1982年当時の農地は40ヘクタール。それを徐々に拡大し、現在、芽室町内に持つ耕作面積は207ヘクタール。この広さは十勝平均の5倍近くで、アメリカ平均をも上回る。うち114ヘクタールに、農薬や化学肥料を5割以上削減して作る、特別栽培の小麦を作付けしている。他にジャガイモ、大豆、小豆、ナガイモなどを栽培する
多角化も図ってきた。99年には農産事業とは別部門の鈴鹿プランニングサポートを設立。同社は地域貢献を目的とし、麦稈(かん)ロール販売や融雪剤散布、ジャガイモ収穫のコントラクター事業を行っている。現在は鈴鹿社長の弟が社長を務める。年商はグループ全体で3億3000万円、社員12人を雇用する。
2.小麦を特別栽培、自社施設で品質管理
売り上げの3分の1を占めるのが特別栽培(特栽)小麦だ。自社で小麦の乾燥・調製施設を保有していたことから特栽が可能となり、2009年に芽室町の仲間と特栽小麦の生産者グループ「十勝はる麦の会」を設立。一元集荷から脱し、顔の見える生産者となった。出荷先は北海道農業企業化研究所(HAL財団)。農産物の国際基準、グローバルGAP認証も取得している。
特栽のガイドラインにのっとり、秋は化学肥料を使わず堆肥(たいひ)と鶏ふん、鶏ふん焼却灰を畑に入れる。これは地力回復にもなったという。約2憶円を投資した小麦の乾燥・調製・貯蔵施設について鈴鹿社長は、「外部混入のリスクを最小限に抑え、パック詰めまでできる」と品質管理面のメリットを強調する。
3.助言受けて加工品開発
同友会には18年に入会。ちょうどサツマイモの干し芋加工を検討していた矢先で、「小規模加工研究会」に興味を持って参加した。そこで得た技術情報や助言も元に開発を進め、今年秋には鈴鹿農園初の農産加工品「紅はるかの干し芋」ができる見込みだ。「入会していなかったら、今だにめどは立っていなかっただろう」と鈴鹿社長。
さらに農産加工品の販売開始を見据え、物流や販路開拓、マーケティングなどを研究する農商工連携部会の「十勝地域商社研究会」にも参加している。「栽培と加工まではできても、その先は門外漢。特に梱包や配送費など物流コストについて知り、できるだけ安くして消費者に届けたい」と考えを示した。
4.「農業らしくない農業」目指して革新
鈴鹿農園はこの30年で農業革新を進めた。「そもそも農業を継ぐことを望んでいなかった。だから農業らしくない農業をやろうと思った」と言う鈴鹿社長。その言葉通り、労力を軽減させる大々的な機械化も特徴だ。中古を含め日本初上陸の先鋭農機具を複数輸入し、速い作業で効率を上げている。
今年秋には日本ではまだなじみの薄い「スペルト小麦」を作り始める。自らドイツへ渡り栽培技術を研修してきた。この小麦は原種小麦の一種で、栄養価が高く、小麦アレルギーを発症しにくいなど複数の特長を秘めている。鈴鹿社長は「ブームの火付け役となり、消費者の健康に貢献したい」と新たなチャレンジを語った。
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