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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「清水・十勝アルプス牧場/橋本牧場」

橋本晃明代表

1.独自の放牧でブラウンスイスを飼育
 橋本晃明さん(56)は3代目。1990(平成2)年から6年かけ、計画的に高栄養の短草を食べさせるニュージーランド(NZ)式の放牧酪農に移行した。その後、牧草の栄養と収量を把握して飼料設計することを基本に、独自の放牧酪農に展開。現在、放牧に適したブラウンスイスをメーンに110頭を飼育している。日本草地畜産種子協会の放牧畜産認証第1号を取得した。

 2011(平成23)からはアイスクリームなどを製造する食品会社にも生乳を供給。その量は約2割。「放牧酪農の珍しさと、脂肪やたんぱく質の高い乳質、風味の良さが認められてのこと」と橋本さん。同時にアイスクリームやミルクジャムを委託製造し、橋本牧場オリジナルの乳製品を販売している。

 また都会の人に酪農を知ってもらう目的でファームインを運営するなど、多角経営に取り組んでいる。アニマルウェルフェア(動物福祉)認証牧場でもある。

2.国産や非遺伝子組み換え飼料を特徴に
 NZ式放牧をスタートした当初は、気候がNZと違うため牧草の伸び方が一定せず思い通りにならなかった。そこで「いい草を作り、牛の目前に据えることが大事」と考え、独自の放牧に改変。まず土壌改良と牧草の栄養把握、草量計算を徹底した。

 土づくりを進めるに従い、牛は歩き回らず一心不乱に放牧草を食べるようになった。貯蔵用の粗飼料作りも高栄養・高品質を狙い、牧草が短いうちに3~4回は刈り取る。常に牧草の状態をみてタンパク量を計り、濃厚飼料とのバランスを取ることも欠かさない。

 若草中心の採食で栄養摂取量が増加すると濃厚飼料を減らすことができた。「経費が浮いた分、購入する飼料を国産や非遺伝子組み換えに切り替えている。こうしたこだわりも橋本牧場の特徴にできたら」と橋本さんは期待する。

3.ブランド育てる意識に変化
 橋本さんはオリジナルアイスクリームに着手する際、同友会会員の農業デザイン会社、株式会社ファームステッドに相談をした。数度の話し合いの末、日高山脈のふもとにちなんだ「十勝アルプス牧場」のブランド名に決まった。さらに雄大な山並みを背景とする放牧イメージと、ブラウンスイスの顔を組み合わせたロゴデザインも完成。乳製品の容器や名刺、牧場パンフレットなどに配している。

 橋本さんは、「橋本牧場の特徴である放牧とブラウンスイスをうまくデザイン化してもらえて良かった。ブランドを育てる意識も生まれた。商品の充実や進化に力を入れたい」と話す。

4.放牧目指す人をサポート
 橋本さんが将来的に関心を持つのは、ブラウンスイス乳のさらなる活用だ。橋本牧場の平均乳脂率は4.1%、平均無脂乳固形分率は8.8%と現状でも濃厚だが、これをブラウンスイスに限定するとさらに高くなる見込み。「加工に適した乳質なので、いつか一定頭数を完全に牧草のみで飼育し、不飽和脂肪酸などを多く含むグラスフェッドバターの製造をしてみたい。チーズ作りにも興味がある。完成した時の喜びは大きいだろう」と夢を語ってくれた。

 橋本さんは、放牧畜産の振興や担い手確保などを目的として19年2月に発足した「全国放牧畜産ネットワーク協議会」の会長に就任した。日本の放牧地は減少の一途をたどるが、放牧酪農を目指す新規就農希望者は少なくない。「そうした人たちが目標を達成できるよう、ネットワークや研修会で支えたい」と先駆けらしい頼もしさを見せる。


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