農に向き合う~農業経営部会会員紹介「帯広・菱中産業」
1.変化に対応 1世紀のもの作り
1913(大正2)年の帯広で、馬具製造販売の中谷商店として創業。その後は農業関連資材に転換し、トラックの幌や畑作用テント、シート、ネット、畜産施設向けカーテンなど製品の幅を広げてきた。現在は太陽光発電システムの設計・建設も手掛ける。
多岐にわたる商品群やサービスの軸は「環境」「空間」「農業」「エネルギー」。佐藤浩一部長は「そのときどきで姿形は変わっても、この軸からは外れない。帯広の地で人々の暮らしや仕事が便利になるもの作りを追求してきた」と1世紀余りの歩みを振り返る。2017年には農畜産物資材のブランド「GREEN LIGHT(グリーンライト)」を立ち上げ、子牛用の防寒着「カーフコート」などの販売を始めた。
2.創業以来のこだわり クラフトマンシップ
事務所の隣にある縫製工場。テントやシートなどを製造する現場だが、「いわゆる工場らしくないと言われる」と佐藤部長は話す。その通り製造ラインが並ぶ無機質な工場と違い、職人たちがミシンや工具と向き合い盛んに動いている。
受注する牛舎の出入り口のカーテンを一つ取っても、一軒一軒で間口が微妙に違い、農家が求める使い方も異なる。現場で寸法を取り、工場に戻って1点ものに仕上げる。自社で一貫した製造体制は創立以来のこだわりで、佐藤部長は「職人の集まり。縫製技術を生業(なりわい)とする我々の矜持の部分で、一番大事にしている」と強調する。
3.変化を厭わないメンバーに刺激受ける
佐藤部長は、帯広を離れることが多い中谷全宏社長の名代という形で同友会活動に参加した。菱中産業に入社前は外資系金融機関などで勤務し、帯広にIターン。農業分野は門外漢だった。「これだけの経営者と接する機会はなかったし、名だたる方々の話を聞けるのは貴重」と話し、農業経営部会のメンバーとの交流が商品開発にもつながった。農業生産や販売に意欲的なメンバーの姿に触れ、「新しいことを厭わない前向きな姿勢に刺激を受ける」と語る。
4.農業現場の挑戦をサポート
青信号を意味する新ブランド名「GREEN LIGHT」は、次の塁を狙うプレーを走者に委ねる野球用語としても使われる。農業現場が新たな試みをするとき、安心して任せられ、サポートしていく存在となる願いを込めた。ブランド第1弾のカーフコートに続き、18年秋にはラチェット(荷締機)を使った牛舎などの出入口カーテンシステムを発表。佐藤部長は「エンドユーザーの声を大切に、新しい挑戦をしていくことを忘れずにいたい」と話している。
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