農に向き合う~農業経営部会会員紹介「帯広・スペースアグリ」
1.衛星画像を毎日配信
米国の宇宙ベンチャーが撮影した衛星画像を、農業者向けに生育マップとして提供する。作物の生育状態や異常が早期に分かり、農家の効果的な管理や施肥につながると期待されている。
小麦の刈り取り時期の判断や、作物の生育に応じて肥料の量を変える「可変施肥」などに活用が可能。4月から11月までマップにアクセスが可能で、晴れれば毎日、最小3メートル四方の画像を見ることができる。分析データの提供も加えた料金は、年額1ヘクタール当たり2000円。生育マップを見るだけなら同200円で提供する。
瀬下(せしも)社長は「高頻度の衛星リモートセンシングデータを安価で気軽に見られる時代が到来している。地域に根ざして農家さん目線で課題解決できるよう長く続けるサービスを目指したい」としている。
2.同友会で経営学ぶ
瀬下社長は、重工業大手のIHIで純国産ロケット「H2A」のエンジン開発などに参画し、文部科学省に出向して宇宙行政にもかかわった。2011年からは、人工衛星によるリモートセンシング(遠隔測定)の活用を担当。農作物を生育管理するシステムの開発を十勝で進めたものの、同社は15年に事業を事実上断念。将来性を感じていた瀬下社長が独立してスペースアグリを立ち上げた。
技術者として一線を歩んできたが、経営は初めての経験。「経営のいろいろな知見を得たかった。農業者のつながりも広がる」と同友会農業経営部会に入会した。
3.農業の多収、高品質へ改良重ねる
現在の衛星データの提供エリアは十勝とオホーツク管内。8JAと契約を結び、個人契約も2百軒になるが、さらに数字を伸ばしていくことが目標になる。会社設立後、今年は実質的に初めての営農シーズンだった。「今年の6、7月は天気の悪い日が多い中でも一定の画像を提供できた。まだまだ伸びしろがあると考えていて、農作業が落ち着いたら農家さんの意見を聞き、多収、高品質につながる改良を重ねていきたい」と抱負を話している。
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