農に向き合う~農業経営部会会員紹介「本別・福田農場」
1.地域の名を取った「美蘭牛」
黒毛和牛の雄とホルスタインの雌による交雑種(F1)を約1000頭飼育し、美蘭別(びらんべつ)の地域名から「美蘭牛」の農場ブランドで出荷している。和牛由来のうま味と、ホルスタインのさっぱりとした赤身肉の両方の良さを備えるのが味の特徴。このうち未経産の雌は「福姫」のブランドで出している。
健康でおいしい牛を育てるため、えさにこだわりを持つ。牧草やデントコーンといった素飼料は100%自給でまかない、輸入穀物の配合飼料はできるだけ少なくしている。福田氏は「自給飼料を多く食べさせることで、肉がその地域の風土の味になる」と語る。
2.牛づくりは、土づくりから
「牛づくりは、土づくりから」が信念。土壌分析をしっかり行い、土に足りない養分を加えていく。化成肥料はできるだけ使わない。牛のふん尿から堆肥を作り、畑に与えて農場内で循環させている。「牛を飼う以上、土づくりに力を入れるのは必須。不利な条件の畑でも、土づくりをすることでしっかりと作物が育つ。人の健康まで考えた農業をしていきたい」と強調する。
土づくりへの熱心さが高じて、農場製の堆肥で国の肥料登録をした。農林水産省の担当者と何度もやりとりしながら苦労の末の登録。「美蘭別の土にこだわった農家が作った肥料」の商品名で町内のホームセンターなどで販売している。
3.人脈生かし地域や農業をアピール
同友会には、農場が同じ町内で現農業経営部会長の前田茂雄氏に誘われて入った。地域も考え方もさまざまなメンバーと接することで、自身の営農や経営のスキルアップにつながっている。ただ、「人づくりや地域づくりが役割だと思っている。自分のお金もうけだけではいけない」と地域や農業のアピールの必要性を重視。離農が増える地域にあって、地区の名を冠した「美蘭牛」で盛り上がりを目指す。現在は同部会の副部長も務める。
4.「おいしい」の一言がやりがい
元々は子牛を成牛まで育てる育成農家だったが、2005年に成牛を市場に出す肥育農家になった。きっかけの一つは福田氏が34歳のときに直面した父の急死。「人生は何が起きるか分からない。思い描くことを行動に移そう」と強く思った。「牛を途中まで育て、その先は他の農家に任せるよりも、自分で出荷までしたかった。『おいしい』と言ってもらえるとやりがいがある」
飼育頭数は約1000頭、牧草やデントコーン、小麦など耕作面積は91ヘクタールに達する。肥育に転向して多忙になったが、「『忙しい』という言葉は嫌い。どう効率的に作業するか常に考えている」と話し、安全でおいしい肉を届けるための努力に余念がない。
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