人の気配「音楽と酒場に対する愛」
音楽制作とは、作っているときは自分のため、出来上がれば誰かのため。そうありたいと常に思っている。クリエーティブであることは、自分の気持ちや暮らしに疑問を持ち、整えることでも調整できるが、完成した作品を多くの人に届けるためには、どこかで周りの助けが必要となる。家で音楽を作って終わりではない限り、感謝すべき人がいるはずなのだ。例えば、今回紹介する大阪のレコードショップ「FLAKE RECORDS」の和田貴博さんもそのひとりである。
「FLAKE RECORDS」は世界中の音楽を取り扱うレコードとCDの専門店で、ミュージシャンの間ではかなり知られた有名店である。2016年には「死ぬまでに、世界で訪れるべきレコード屋27選」としてアメリカの媒体でも紹介され、日本のみならず、世界からも注目されている。
その背景には、海外のアーティストを日本に呼び、ジャパンツアーを取り仕切ってきた経験も関係しているように思う。この時代に、レコードショップとしての存在感を持ち続けることは簡単なことではない。音楽のセレクトをはじめ、主催イベントやレーベル業など、関わる全てに説得力が求められる。全ては信頼できるかどうか。それは音楽に対する愛情と言い換えることもできるだろう。そんな素晴らしい店のレコード棚に僕の作品が並んでいることが、また次のモチベーションにつながっていく。
さらに、和田さんは安くてうまい酒場を知っている先輩でもある。打ち上げはもちろん、2人ではしご酒をすることもあった。また近々、難しいことを考えずにうまいものを食べて酒を飲むだけの会をしたい。気持ちが軽くなるような、新曲『Call Me Up』のような時間。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。一昨年のV6への楽曲提供が話題。ニューアルバム『Chase After』をリリースし、25日の大阪公演、29日の東京公演の準備真っただ中。