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ワイン用ぶどうの生育不良でお悩みの方へー農家ができる土層改良法ー

道総研 中央農業試験場 農業環境部 環境保全グループ

1.背景と目的
 道内には定植後の生育が不良で生産性の劣る醸造用ぶどう栽培圃場が存在するためワイン原料の安定供給や新規就農者の経営安定化の妨げとなっている。生育不良の要因として地域の気象条件の他に土壌による影響が想定されるが具体的な阻害要因ならびに改良法は明らかにされていない。
 本課題では、ぶどう樹の生育に影響を及ぼす土壌要因を明らかにし、不良要因に対応した生産者が実施可能な土壌物理性の改良法を開発した。

2.試験の方法
1)醸造用ぶどうの生育と土壌理化学性との関係
  後志8圃場、空知他(石狩、上川を含む)11圃場(台地土が8割)において、各圃場内で品種、定植年が同一な生育不良地点と不良地点より生育良好な対照地点を選定し、土壌調査を実施。
2)生産者が実施可能な土壌物理性改良法の開発
  (1)作土下が堅密なぶどう樹列の片側に、施工した深さまでの土層全体を砕く全層心土破砕機(松山(株)製パラソイラー)を施工。全層心土破砕機を施工した全層心破区ならびに無処理区(一部圃場に心破区)を設置。(2)定植前の堅密な圃場への全層心土破砕処理を行い定植し無処理区と比較。(3)排水不良部への排水用の明暗渠設置と穿孔暗渠や弾丸暗渠による排水改良を実施。

3.成果の概要
1)生育不良地点は対照地点に比べて作土が浅く、作土下の浅くから堅密で亀裂や孔隙が少なく窒素やリン酸肥沃度の低い土壌環境であることが推察された( 表1)。生育不良地点では作土が流された傾斜上部や圃場造成時の切土部など、土壌理化学性の不良な母材が作土下の浅い位置から出現していると考えられた。
2)生育不良地点の地域の特徴として、後志は作土下が堅密で亀裂や孔隙の少ない土壌物理環境に加えて熱抽窒素や有効態リン酸が極度に低い土層が生育に影響していることが想定され、空知や上川、石狩地域では作土が浅いため、作土下の不良な土壌理化学性の影響をより強く受けていることが推察された(表1)。
3)醸造用ぶどうの定植前ならびに定植後、列間への全層心土破砕により施工深度(深さ40cm)までの土壌が全体的に膨軟になり土壌の浸透能が高まり、土壌物理性や施工後の土壌水分環境も改善し、施工後における醸造用ぶどうの生育収量は概ね良好な傾向を示した(図1、表2)。ぶどう樹列の両側に施工した場合、片側のみの施工や無処理区に比べて生育収量が劣った(データ略)。
4)心土破砕は全層心土破砕に比べて破砕の影響範囲が狭く土壌物理性の改善効果は劣り、施工後1作目における生育収量への効果は判然としなかったことから、堅密土層の破砕は全層心破が望ましい(表2)。
5)全層心土破砕の施工効果は施工後2年経過時でも認められた(表2)。一方で農作業機械のタイヤ通過部周辺の土壌は施工後2年で再び堅密化しており、施工後3年目には再施工が必要と思われた(データ略)。
6)圃場外へ排水を促すため生産者自らが疎水材暗渠を傾斜下部の通路沿いに埋設し、暗渠疎水材に交差するように樹列間に穿孔暗渠や弾丸暗渠を施工すると、圃場の排水性が改善し地耐力が向上した(データ略)。
7)以上の結果を元に、ぶどう樹列の傾斜下部端に集水用の疎水材暗渠を列に交差する方向に埋設し、列間に施工する改良機の破砕刃を暗渠疎水材や排水路に接続させる土壌物理性改良法を示した(図2)。

4.留意点
1)定植前の土層改良を基本とするが、栽植中のぶどう樹列間への全層心土破砕は作土下の浅くから堅密で生育不良な樹に対して行う。その場合、断根の影響を考慮し、樹列に対して両側施工は避ける。また根頭がんしゅ病発生圃場では発生状況にも留意する。
2)栽植中の株元周辺の堅密土壌に対しては全層心土破砕機に装着する破砕用の部品で対応できる。

【用語解説】
穿孔暗渠、弾丸暗渠:どちらも土の中に水とおりの良い大きな孔を空けることができる排水改良の方法。



詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研中央農業試験場 環境保全グループ
電話(0123)89-2001
E-mail:central-agri@hro.or.jp

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