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多雨でも安心 移植たまねぎの省力窒素施肥法

道総研 北見農業試験場 研究部 生産技術グループ
ジェイカムアグリ株式会社

1.背景と目的
 近年の気象変動に伴う多雨の頻発により、移植たまねぎ栽培の収量の不安定化がみられ、本来安定的に収量が得られる分施技術も経営面積の拡大と労働力不足に伴う作業の競合や気象条件による圃場環境の不良、現有機械による圃場内均等施用の難しさなどにより、適期・適切に行えない場合が多い。そこで、分施を省略しつつ収量を安定的に確保する肥効調節型肥料の窒素溶出特性と施用法を明らかにした。

2.試験の方法
1)肥効調節型肥料の窒素溶出特性の把握
  移植たまねぎ栽培に適用が想定される、溶出タイプならびに溶出期間が異なる肥効調節型肥料の窒素溶出特性を把握する。
  被覆尿素肥料リニア型およびシグモイド型20、30日タイプ(以下L20、L30、S20、S30と略)をたまねぎ施肥時期に埋設し、順次回収して窒素溶出率の推移を調査した。
2)窒素分施省略技術の開発
  移植たまねぎに対して分施を省略しつつ安定して収量を得るための窒素施肥法を明らかにする。
  (1)収量性評価(北見農試圃場)
   速効性肥料窒素と1)で供試した被覆尿素肥料の窒素を1:1または1:2で組み合わせて基肥施用し、生育量推移と収量を慣行区(速効性窒素全量基肥)および分施区(速効性窒素で基肥:分施=2:1、分施は移植4週後実施)と比較し収量性を評価した。
  (2)施用効果の検証(オホーツク管内現地圃場)
  (1)で評価が高い試験区を慣行区および分施区と比較し検証した。
  供試品種は(1)(2)ともに「北もみじ2000」(中生)、窒素施肥量は、北見農試は15kg/10a、現地は12または15kg/10a とした。

3.成果の概要
1)埋設試験における積算地温と被覆尿素肥料からの積算窒素溶出率との関係は、圃場、年次や埋設時期によらず一定であった(図1)。積算窒素溶出率は、L20・L30は現行施肥体系の分施時期である移植4週後までに約5割溶出するのに対し、S20・S30は1~2割に抑えられ、移植4週後から球肥大期までの期間に各7、8割が溶出した。施肥から移植までの期間の長短による、移植4週後から球肥大期までの期間における窒素溶出率の変動はS30が最も小さく、S30による窒素供給効果は安定して得やすいと考えられた。
2)被覆尿素肥料を用いた試験区の北見農試における深さ0~20cm の土壌無機態窒素含量の変動は、特に移植後早い時期に慣行区や分施区に比べて小さく、シグモイド型・リニア型ともに30日タイプを用いた方がより小さかった(データ省略)。同じく総収量および規格内収量は、速効性窒素と被覆尿素窒素を1:1または1:2の割合で基肥施用した場合に慣行区より概ね多く、分施区と同等得られた。特にS30を用いた区は規格内収量が慣行区に比べて有意に多く、収量確保の効果は最も安定すると見込まれた(表1)。
3)現地と北見農試の延べ8圃場において、S30(1:1)とS30(1:2)両区の土壌無機態窒素含量は移植2、4週後に慣行区より、6週後に分施区より少ない傾向であった(表2)。両区の収穫期窒素吸収量は慣行区よりやや多く、分施区よりやや少ない傾向であった。同じく規格L 以上の収量は慣行区より多く、分施区と同等得られた。よって、現地圃場においても収量確保に対するS30施用の効果を確認できた。
4)S30を用いた試験区における総収量および規格内収量の慣行区との相対比は、施肥後耕耘日から根切日までの期間の積算降水量との間に有意な正の相関関係が認められた(図2)。移植たまねぎに対して基肥にS30を用いることで、多雨条件においても収量の確保に有効である。

4.留意点
1)品種や地域が本試験と異なる場合は、事前に栽培し効果を確認する必要がある。



詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研 北見農業試験場 研究部 生産技術グループ
電話(0157)47-2146
E-mail:kitami-agri@hro.or.jp

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