鹿追百年新聞「発展に熱き鍬 明日へのバトンつなぐ」
◆神輿が縁、台東区交流
「鹿翔」初代会長 鈴木運蔵さん
町と東京都台東区が2017年に連携協定を締結するまでには、20年近い民間交流の積み重ねがあった。
きっかけとなったのはお神輿(みこし)。町内の神輿会「鹿翔」(ろくしょう)が1997年、陸上自衛隊員の親睦団体「曹友会」の橋渡しで、三社祭(浅草神社例大祭)に参加。三社祭の頭「新門辰五郎」こと杉林仁一さんに一目置かれた鹿翔の会員は、以来、毎年のように祭りの手伝いに駆け付ける一方、杉林さんも鹿追を訪れるなど交流を続けてきた。
その後、杉林さんらの計らいで鹿追の特産品を浅草寺の仲見世で販売したり、小学生の相互派遣などを実施。こうした草の根の活動の上に連携協定が成立した。環境・産業分野での協定に加え、2021年度からは新たに災害時相互応援協定も加わった。
鹿翔の初代会長で、両者の信頼関係構築に貢献した鈴木運蔵さん(75)は「自分たちはただ一生懸命に神輿を担いできただけだが、それがまち同士の連携につながってうれしい。これからも特に子どもたちが行き来して、お互いに刺激を受けてもらいたい」と話す。
◆ピュアモルトクラブハウス
若者が集い 未来を語る
青少年の活動拠点として整備されたピュアモルトクラブハウス。円形の瀟洒(しょうしゃ)な建物に若者たちは自然と集い、町の未来を語り合ってきた。
老朽化した青少年会館の改築を機に構想された同ハウス。当時の建設検討委員会会長で、青年組織ピュアモルトクラブ初代会長を務めた奥秋吉広さん(63)は「コンセプトは『まちづくりは人づくり』」と語る。
元の青少年会館は、農村青年会の利用が主だったのに対し、同ハウスは農業者のみならず商工業者や役場職員、自衛官など立場を超えて集える場を目指した。人々が車座になって語り合うイメージから、中庭を囲うサークル型の建物とし、内部にはホールや、ラウンジ、調理室などを備える。
単身女性が対象の産業研修生用の居住棟も併設。町内の若者と自然と交流が生まれ、町に溶け込みやすい環境を提供してきた。これまでの研修生258人のうち40人が町に残り、うち25人が農家などに嫁いだ。
「誰かがここで何かしようとすると、他の人が手伝ってくれ、若者のネットワークができていった」と奥秋さん。「これからも若い人たちがここに集い、協力してまちをつくっていってもらいたい」と期待する。