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土壌凍結地帯の放牧地で ペレニアルライグラスを追播利用

酪農試験場 草地研究部 飼料生産技術グループ
畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ

1.試験のねらい
 ペレニアルライグラス(以下「PR」)は道東の土壌凍結地帯では冬枯れの被害が懸念されるため、基幹草種としての利用は困難とされている。一方で、栄養価、採食性に優れることから、PR を栽培する生産者は道東でも一定割合存在する。しかし、その実態や栽培技術については不明な点が多い。そこで、放牧適性と栄養価に優れるが越冬性に劣る PR について、道東の草地における導入実態を調査するとともに、追播による放牧地への導入方法および効果を明らかにする。

2.試験方法
1)道東で PR を栽培する生産者を対象として、PR 導入方法や土壌条件と定着、維持年限等について調査し、PR の導入実態を整理する。
2)TY 主体放牧地に対する PR の追播導入方法(播種時期、播種量)を明らかにし、被度および収量等におよぼす効果を検討する。

3.成果の概要
1)道東土壌凍結地帯の生産者が圃場に PR を導入する場合、放牧地および兼用地では追播、採草地では新播時に補助草種として混播する場合が多かった。播種時期は早春または1番草収穫直後、播種量は追播では2.0kg/10a、新播では0.1~0.2kg/10a 程度であった。

2)土壌凍結地帯で PR を利用する場合、①冬枯れの影響は避けらないこと、②越冬性に優れる基幹イネ科草種と混播して放牧または兼用利用すること、③ PR が減少した場合には適宜追播する必要があることが示唆された。

3)追播2年目の PR 被度は追播時期が早いほど早期に高まった。追播3年目は、冬枯れが発生しなかった畜試では PR 被度が上昇を続けた。冬枯れが発生した酪農試では、播種時期によらず5月の PR 被度が0%となったが、同年10月には40%程度まで回復した。9月追播では5月および7月追播と比較して、追播2年目の8月まで PR 被度は低く推移した(図1)。

4)PR を追播することにより、乾物収量は無追播と比較して春は低収傾向、夏は同程度、秋は多収傾向であり、秋の乾物収量は20~50%増加することが示唆された。年間合計乾物収量は越冬状況によって異なり、冬枯れによる早春の減収程度が小さい年は多収、大きい年では低収となった(表1)。

5)PR 追播時の播種量は2.0kg/10a を基本とし、5月追播では播種量を1.0kg/10a に低減しても2.0kg/10aと同程度の乾物収量および乾物中 PR 割合が維持された(表1)。

6)晩秋の PR 被度が高すぎると、翌年春の乾物収量比は低下する傾向があった(r =0.67, p <0.05)(図2)。

7)無追播に対する乾物収量比は春と年間合計との間に正の相関関係(r =0.93, p <0.01)が認められ、春の収量比が80以上で、年間合計の収量比は100以上となった(図3)。土壌凍結地帯で TY 主体放牧地に PRを導入する場合、晩秋における PR 被度の上限を40%程度として維持することが望ましいと考えられる。

4.留意点
1)道東の土壌凍結地帯で PR を追播利用する際の情報として活用する。

2)本試験は日本中央競馬会(JRA)畜産振興事業「北海道東部地域の土壌凍結地帯のおけるペレニアルライグラスによる草地簡易更新技術確立事業」により実施した。



詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研酪農試験場 草地研究部 飼料生産技術グループ 角谷芳樹
電話 0153-72-2004
FAX 0153-73-5329
E-mail sumiya-yoshiki@hro.or.jp

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