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泥炭草地の更新で除草剤を使える条件

道総研 酪農試験場天北支場 地域技術グループ

1.試験のねらい
 泥炭土草地では現在、草地更新時のグリホサート系除草剤の播種前雑草茎葉散布処理(以下、播種床処理)が推奨されていない。グリホサート系除草剤の有効成分は土壌粒子の土鉱物に結合することで不活性化するといわれているが、植物遺体が主成分の泥炭土ではこの作用が働きにくいためである。近年多くの泥炭土草地で客土事業が行われ、作土中の土砂含量が増えている。このような圃場では播種床処理は有効であると考えられるが、土砂含量等に応じた薬剤の適用条件は整理されていない。そこで本試験では泥炭土草地において、NC-622液剤(グリホサートカリウム塩48%液剤)による播種床処理の適用条件を明らかにし、北海道農作物病害虫・雑草防除ガイド改訂の資とする。

2.試験の方法
1)NC-622液剤による薬害発生を検討するために適切な水分条件を明らかにする。
2)土砂含量の異なる土壌を用いて、ポット試験により薬剤が発生しうる土砂含量について明らかにする。
3)現地圃場でチモシー(TY)を用いて播種床処理を実施し、土砂含量との影響を検証する。
4)現地圃場においてオーチャードグラス(OG)・ペレニアルライグラス(PR)等を用いて播種床処理を実施し、土砂含量との影響を検証する。
5)宗谷地方の客土済み泥炭土草地83筆において、表土0~15cm(もしくは客土深)の土砂含量を測定し、現地の泥炭草地における土砂含量の実態を調査した。

3.成果の概要
1)過湿処理によって対照区(適湿)を上回る出芽低下割合を示した区は認められず、薬害評価においては過湿処理が不要であることが示された(表1)。
2)無処理区に対して薬害により10%以上の出芽率低下を示さない土砂含量は、播種床処理における農薬登録量の上限である500ml/10a では55%以上であった(図1)。
3)現地試験において、TY の越冬前個体数は1300−2200本/ ㎡であり、土砂含量54-76%の範囲では、土砂含量が越冬前TY 個体数に及ぼす影響は認められなかった(図2)。
4)OG、PR を播種した現地2圃場(E、F)において、越冬前の雑草の冠部被度は播種床処理区では1割以下であったが、無処理区では6割程度となり、播種牧草は被圧された(表2)。播種床処理区では両圃場とも越冬前に十分な茎数が確保された。こちらに示すように300ml/10a でも防除効果は現れているため、散布量は「北海道防除ガイド」に記載されている200~300ml/10a を推奨する。
5)現地調査した泥炭土草地の9割弱(83筆中73筆)で土砂含量が55%以上であり、概ね本成果を適用できる。

4.留意点
1)本成果は客土を行っている泥炭土においてNC-622液剤の播種床処理を行う際に活用する。
2)土砂含量が低いことが懸念される場合は、実際に土壌を採取し、外部の土壌分析機関などに依頼し、土砂含量を確認する。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研酪農試験場天北支場 地域技術グループ 岡元英樹
電話 01634-2-2111
FAX 01634-2-4686
E-mail okamoto-hideki@hro.or.jp

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