十勝毎日新聞 電子版

Tokachi Mainichi News Web

高水分牧草サイレージ調製時における 乳酸菌・酵素製剤の添加効果

道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ

1.試験のねらい
 良質なサイレージを調製するには、乳酸発酵の基質となる糖含量が高い草を用いて、適切に予乾を行う必要がある。しかし、天候不順や糖含量の低い雑草の侵入等により、それらの条件が整わない場面では添加剤の活用が選択肢となる。「サイマスターAC」は2種類の乳酸菌と酵素(セルラーゼ)からなる複合製剤であり、糖含量が低い原料草での発酵品質の改善を狙ったものである。昨年、供試乳酸菌の1菌株が、より耐酸性の高い菌株に変更された。本試験では、菌株変更後の「サイマスターAC」新製品(以下,新 AC)の添加による、牧草サイレージの発酵品質改善効果を明らかにすることを目的とした。


2.試験の方法
1)小規模サイロにおける乳酸菌・酵素製剤の添加効果
 シバムギ,リードカナリーグラスおよびチモシーがそれぞれ優占する草地の1番草を、無予乾で290L の試験サイロに詰め込んだ。試験処理は無添加、新 AC 添加および菌株変更前の従来製品(従 AC)添加とした。
約2ヶ月後に開封し、発酵品質と化学成分を調査した。

2)バンカーサイロにおける乳酸菌・酵素製剤の添加効果
 リードカナリーグラス主体草地の1番草を、無予乾で2本のバンカーサイロに同時に詰め込み、片方に新AC を添加した。2~5ヶ月後に開封し発酵品質と化学成分を調査した。


3.成果の概要
1)-(1)新 AC および従 AC の添加により、pH,酪酸含量,全窒素に対する揮発性塩基態窒素の割合(VBN/TN)が有意に低下、乳酸含量および V-Score が有意に高まり、発酵品質は向上した(表1)。添加した製剤間で発酵品質に有意な差は認められず(t検定;p >0.05)、新 AC は従 AC と同等の発酵品質改善効果を有することが明らかとなった。

1)-(2)原料草の可溶性炭水化物(WSC)含量は4.8~10.0% DM の範囲にあり、製剤の添加によらず WSC含量が高い原料草ほどサイレージの発酵品質は良質となる傾向が見られた(図1)。pH の低下や V-Scoreの向上等の品質改善効果は、WSC 含量が4.8~5.8%と低い原料草(表1:試験 C、D)や、酪酸菌の混入が疑われる原料草(表1:試験 A 枯れ草が混入,図1:TY2)堆肥が混入)を用いた試験で明瞭に認められた。

1)-(3)新 AC および従 AC の添加により、水分,中性デタージェント繊維(NDF)含量が有意に低く、非繊維性炭水化物(NFC)含量が有意に高くなった(表1)。無添加との差は小さく、可消化養分総量(TDN)に有意な差は認められなかった。

2)-(1)小規模サイロ試験と同様に、新 AC の添加により乳酸発酵が促進され、酪酸発酵が抑制される傾向が見られた(表2)。発酵品質は2ヶ年ともに無添加では V-Score が50点台(不良)の劣質なものとなったが、新 AC の添加により60~70点(可)となり発酵品質は向上した。化学成分の変化は小規模サイロと同様であった。

2)-(2)小規模サイロ試験と同様に、新 AC 添加による発酵品質の改善幅は WSC 含量の低い原料草で大きかったが、得られる発酵品質は WSC 含量とともに低下した(図1)。

4.留意点
 原料草の WSC 含量が低すぎると、本剤を添加しても発酵品質を十分に改善できない可能性がある。植生改善や肥培管理の見直しを含めた利用が望まれる。






詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ 湊 啓子
電話(0156)64ー0622 FAX(0156)64ー6151
E-mail:minato-keiko@hro.or.jp

更新情報

施設整備で通年集客へ 観光ビジョンと整合図る 新嵐山スカイパーク「素案」説明会

紙面イメージ

紙面イメージ

12.2(月)の紙面

ダウンロード一括(74MB) WEBビューア新機能・操作性UP

日別記事一覧

前の月 2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

十勝の市町村

Facebookページ

記事アクセスランキング

  • 昨日
  • 週間
  • 月間

十勝毎日新聞電子版HOME