グラスシーダーで播く時はこの量で! (研究成果名:オホーツク(北見内陸)および根釧地域における牧草播種機 を利用した夏播種条件下でのチモシー主体草地安定造成のための播種量)
道総研 酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ、地域技術グループ
1.試験のねらい
牧草播種機による高精度播種を前提に、牧草が過密または疎植となって植生悪化等の潜在的要因となることを防ぐため、夏播種時の播種量基準を新たに設定する。
2.試験の方法
1)北見農試場内(手播き、黒ボク土)および遠軽町現地(機械播き、灰色台地土または褐色低地土)において、播種量について TY :0.6~2.5kg/10a(品種「なつちから」)、AL :0.1~0.5kg/10a(品種「ケレス」)、WC : 0.05~0.2kg(品種「ソーニャ」)の範囲での組み合わせによる処理を行った。標準処理は TY1.8-AL0.5-WC0.2kg/10a とした。播種は、除草剤処理後、8月上中旬に行い、基幹的な処理は播種機(ブリリオン社グラスシーダ)による機械播きで実施した。調査項目は、個体数、倒伏程度、乾物収量、冠部被度等とした。
2)酪農試場内(手播きおよび機械播き、黒ボク土)において、播種量について TY : 0.6~2.2kg/10a、AL :0.3~0.5kg/10a、WC :0.1~0.3kg の範囲での組み合わせによる処理を行った。標準処理、播種および調査項目等は、オホーツク地域と同様とした。
3.成果の概要
1)-(1)播種量を TY :1.0~1.4-AL :0.2-WC :0.1kg/10a に低減した処理区(以下、推奨処理)は、標準処理に比べて播種翌年の越冬後早春における TY 個体あたり茎数が多くなった(図1)。したがって、推奨処理は、個体サイズが大きくなる傾向にあり、TY 個体の競合力がより優れることが推察された。
1)-(2)TY の個体数は、播種時と比べ播種翌年越冬後には減少しており、処理間差異は播種時や定着時より小さくなった(データ略)。
1)-(3)播種翌年において、推奨処理は、標準処理に比べ牧草合計の年間合計乾物収量で多くなり、倒伏が認められた試験では倒伏程度で低くなる傾向にあり、越冬前冠部被度では TY が高くなる傾向にあった(表1)。
1)-(4)推奨処理の範囲外の処理では、倒伏害や植生悪化等のリスクが高まる可能性が推奨処理と比べ高いと考えられた(データ略)
2)-(1)TY 個体数は、播種年の越冬前にはいずれの処理とも概ね同程度となった(データ略)。
2)-(2)播種翌年における牧草合計の年間合計乾物収量は、機械播き試験では TY 播種量1.0kg/10a 以下でやや低い傾向が見られたが(データ略)、播種量の多少と一定の関係性が認められなかった(表2)。倒伏程度は、TY 播種量を低減すると同程度からやや低くなる傾向にあった(表2)
2)-(3)WC 播種量を0.1kg/10a に低減すると播種翌年の2番草マメ科率は低下した(H28年播種、データ略)。
根釧地域で夏播種を行うとマメ科牧草の定着・生育が劣るため、マメ科牧草の播種量は現行の播種量を維持することが望ましいと考えられた。
以上のことから、オホーツク地域(北見内陸)では TY :1.0~1.4-AL :0.2-WC :0.1kg/10a の播種量が、根釧地域では BC での播種を前提として提案された既往の知見と同様に TY :1.2~1.8-AL :0.5-WC :0.2kg/10aの播種量が、TY 主体採草地の安定造成のために望ましい(表3)。
4.留意点
1)播種晩限を遵守した播種機による夏播種に適用する。
2)播種に際しては除草剤処理を行うなど適切な雑草対策を行う必要がある。
3)本成果は、早生の TY、中葉型の WC、AL の混播条件で得られたものである、
4)マメ科牧草が優占しやすい地域では、オホーツク(北見内陸)の播種量を参考とする。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研酪農試験場 草地研究部 飼料環境グループ 角谷 芳樹
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