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平成30年に特に注意を要する病害虫

道総研 中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ

1.はじめに
 北海道病害虫防除所、道総研各農業試験場、および道農政部技術普及課等で実施した病害虫発生予察事業ならびに試験研究の結果から平成30年に特に注意すべき病害虫について報告する。

2.平成29年の病害虫の発生状況
 平成29年は6月に道央を中心として多雨となり、りんごの黒星病が多発した。7月には記録的な高温があり、あぶらな科野菜におけるコナガの密度が上昇した。一方で7月の降水量は少
なかったため、てんさいの褐斑病などは多発には至らなかった。近年問題となっている秋まき小麦のなまぐさ黒穂病は平成29年度も道内の広域にわたって発生した。
 主要病害虫で多発となったのは、ブロッコリーのコナガ、りんごの黒星病、腐らん病であった。やや多発となったものは、水稲の紋枯病、ヒメトビウンカ、秋まき小麦の雪腐病、春まき小麦(初冬まき)の赤かび病、小豆の灰色かび病、ばれいしょの軟腐病、黒あし病、りんごの斑点落葉病であった(表1)。


3.平成30年に特に注意を要する病害虫
1)てんさいの褐斑病
 てんさいの褐斑病においては、平成29年に新たにDMI 剤に対する耐性菌の出現と、カスガマイシン剤に対する耐性菌発生の拡大が報告された。これらの耐性菌は全道に広く分布していると考えられ、本病に対する防除では特に注意する必要がある。
 薬剤散布を行う際には、DMI 剤およびカスガマイシン剤(いずれも混合剤を含む)の使用回数を可能な限り低減するため、マンゼブ剤や銅剤を基幹薬剤とする。また、地域の平年初発期や予察情報を参考に、初発直後までに散布を開始する。散布間隔は14日以下とし、特に本病の感染に好適な高温や多湿条件となる場合には10日以下とする。8月下旬で散布を終了すると、その後の発病が急激に進展する場合が多いため注意する。
 また、本病の発生を抑えるためには、薬剤散布によらない耕種的防除を積極的に取り入れることも重要である。具体的には、感染源を高めないために連作を回避し、本病に対する抵抗性が“強”の品種を作付けする。
2)あぶらな科野菜のコナガ
 あぶらな科野菜のコナガは、道内において平成26年にジアミド系薬剤に対する抵抗性遺伝子を保持した個体が確認され、平成28年には生産現場においても春季から夏季にかけて抵抗性遺伝子の保持割合の上昇が確認された。
 平成29年にも、道内の一部生産現場から、コナガに対するジアミド系薬剤の効果が低く防除に苦慮しているとの情報が寄せられている。また、試験機関が実施した防除試験においても、ジアミド系剤の防除効果が従来よりも高くはないことが確認されている。
 これらへの対処として、従来からの注意事項である、①ジアミド系剤を含め、同一系統薬剤の連用を避ける、②防除実施後の効果の確認に努め、防除効果が低いと判断された場合は、他系統の薬剤による追加防除の実施を検討する、③灌注剤、茎葉散布剤としての使用時に、所定の処理量を遵守することが大切である。
3)りんごの黒星病
 黒星病は葉だけでなく、果実にも病斑を形成するため、著しい収量減の要因となる。適切な防除により近年一般園における本病の発生は見られていなかったが、平成27年に重点防除期以降の薬剤散布間隔が開いた一部の園地で発生が認められた。平成28年には被害に至る園地も認められ、平成29年も引き続き被害が発生している。
 本病は平均気温が15~20℃で多雨のときに多発しやすい。平成29年は6月の多雨が本病の発生に好適な条件となった。平成30年においても感染源は多いと推測されるため、防除時期を逸しないように薬剤を散布する。加えて、近年夏季の多雨傾向が続いていることから、重点期の防除はもちろん、それ以降も間隔が開きすぎないように薬剤を散布する。防除機の切り返し地点など、防除が不十分な場所で発生が目立つことから、薬剤散布においては適切な水量を遵守し丁寧に散布する。
 また、青森県では、平成28年に基幹防除薬剤であるDMI 剤に対する耐性菌の出現が確認され、平成29年から本病に対する本系統剤の使用が全面的に禁止された。道内におけるDMI 剤に対する感受性低下事例は確認されていないものの、本系統も含め同一系統薬剤の連用は避ける。
4)りんごの腐らん病
 腐らん病はりんごの最重要病害であり、主幹、主枝および枝梢部に発生して胴枯れ、枝枯れ症状を引き起こす。冬期間を除くほぼ通年、樹皮に形成された子のう殻や分生子殻(柄子殻)から胞子が分散する。このため、りんご栽培期間全体にわたって本病に対する警戒が必要である。
 本病は多くの園地で発生がみられ、これまでも注意喚起を行ってきたが、平成29年には発生面積率75.1%(平年44.3%)、被害面積率30.4%(平年16.1%)と発生量は増加した。これには、近年の多発傾向により伝染源密度が高まっていること、過年度の凍害による樹体損傷やなり疲れ、樹齢が高まっていることで樹勢が弱まっていることなど様々な影響が考えられるため、総合的な対策の実施が必要である。
 本病の対策は「りんご腐らん病総合防除対策指針」に基づく、適切な剪定、施肥、土壌管理、干害防止のための草生管理、適正な着果量の確保など、基本管理の徹底が最も重要である。また、本病の病斑からは一年を通して胞子が分散されることから、園地をよく観察し、病斑を見つけ次第速やかにり病枝の切り落としや病患部の削り取りを行う。切り取った枝や削り取った樹皮も園内に放置すると感染源となるため、必ず園外に持ち出して適正に処分する。削り取り部の他、せん定、摘果などによる傷も感染口となるので、ゆ合剤を塗布するとともに薬剤の枝幹散布も行い、本病に感染しないよう管理する。また、収穫後の休眠期防除も実施する。

4.平成29年に新たに発生を認めた病害虫
 平成29年に新たに発生を認めた病害虫は15(病害9、害虫6)である。抜粋して紹介する。
1)えんどうの萎凋病(新発生)
 下葉から黄化する症状が発生し、り病株の維管束には褐変症状が見られる。土壌および種子伝染するため、汚染土壌の移動防止と健全種子の使用が重要である。
2)ねぎの白絹病(新発生)
 ねぎの外葉が枯死する症状が発生し、土壌表面には白色の菌糸と直径約1mm の淡褐色の菌核が認められた。病原菌は多犯性で多くの作物に白絹病を引き起こすため、注意が必要である。

【補足】
 特に注意を要する病害虫および新発生病害虫の詳細な情報については、北海道病害虫防除所のホームページに掲載していますので、そちらもご覧ください。

詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431  E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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