線虫・そうか病・塊茎腐敗に強く チップカラーが優れる ばれいしょ「北育22号」
道総研 北見農業試験場 研究部 作物育種グループ、生産環境グループ
道総研 中央農業試験場 作物開発部 作物グループ、生物工学グループ
同 病虫部 予察診断グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 地域技術グループ
1.背景
加工用の主力品種である「トヨシロ」は、収穫後から翌年の1月頃までポテトチップ原料として使用されている。しかし「トヨシロ」は病害虫抵抗性が弱く、特にジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たないことから、安定生産上の大きな問題となっている。そこで、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性とそうか病抵抗性を持つ、高品質なポテトチップ用品種の開発を目標として、交配・選抜を実施してきた。
2.育成経過
ばれいしょ「北育22号」は、北見農試において平成17年に、そうか病に強い「スノーマーチ」を母、ポテトチップ加工適性が優れる「きたひめ」を父として人工交配を行い、選抜された系統である。道総研における生産力検定試験および特性検定試験を経て、平成26年から道内各地の農業改良普及センターにおける現地試験を行い、実用性を検討してきた。
3.特性の概要
「北育22号」は「トヨシロ」と比べて、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、ポテトチップカラーが優れる。また、そうか病抵抗性および塊茎腐敗抵抗性はともに“やや強”で「トヨシロ」より強く、既存品種の中でも高い水準である。
早晩性は「トヨシロ」よりやや遅い中生であるが、秋まき小麦の前作として作付け可能な熟期である(表1)。上いもの平均重は「トヨシロ」よりやや小さいが、規格内いも重は「トヨシロ」並である。塊茎は円形で、目はやや浅い(表2)。褐色心腐、中心空洞の発生は「トヨシロ」と同程度で、打撲黒変耐性は「トヨシロ」よりやや強い。ポテトチップカラーは「トヨシロ」の使用時期である収穫後から翌年1月にかけて優れる(表3、写真)。病害虫抵抗性は、ジャガイモシストセンチュウ、そうか病および疫病による塊茎腐敗の抵抗性は「ト
ヨシロ」より強く、疫病には「トヨシロ」同様弱い(表4)。
4.普及態度
「北育22号」を「トヨシロ」の一部に置き換えて普及することにより、高品質な加工原料の安定生産に寄与する。
1 )普及見込み地帯:北海道の加工用ばれいしょ栽培地帯(特に、ジャガイモシストセンチュウ発生地域および発生の懸念される地域)
2)普及見込み面積:1,500ha
3)栽培上の注意事項:
(1 )小粒化により低収となる場合があることから、「トヨシロ」より3cm 程度株間を広げるのが望ましい。
ただし、中心空洞の懸念があるので、極端な疎植はさける。
(2 )Yモザイク病の病徴が「トヨシロ」より見えにくいことから、原採種栽培におけるウイルス罹病株抜き取り作業の際は留意する。
【用語解説】
ポテトチップカラー: アグトロン計で測定したチップの白さの指標で、値が大きいほど焦げ色の少ない明るい色である。グルコースは、焦げの原因となる物質である。
ジャガイモシストセン チュウ:ばれいしょの根に寄生し大幅な収量低下をもたらす害虫で、薬剤等による防除・根絶は困難である。抵抗性品種の栽培は減収を回避でき、さらに土壌中の線虫密度を低下させる効果がある。
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道総研北見農業試験場
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